骨粗しょう症と治療
2011年06月01日
昨今はテレビや雑誌などで「骨粗しょう症」という言葉をよく見かけます。外来でも骨粗しょう症について心配される方を多く診療しています。日常でもよく使用する言葉ですが、実際のところ正確に理解されているでしょうか?今回は、骨粗しょう症という病気について説明していきます。
長野中央病院 整形外科 医師 高山 定之
骨粗しょう症とは
定義では「骨量が低下して、骨が弱くもろくなり、骨折を起こしやすい病的状態」となっています。原因のひとつには加齢に伴う代謝の低下があります。また、女性においては閉経に伴ってホルモンのバランスが崩れることで、骨が溶け易くなることが要因のひとつです。
骨粗しょう症による骨折の危険
骨折経験のない、骨粗しょう症の50代の女性でも、5年以内に3%は骨折になるといわれています。これに「骨折を経験したことがある」というリスクが加わると、骨折になる可能性は1.5倍程度に上がります。
自分の骨量を知るには
骨密度を測ることで、骨量の低下を確認することができます。現在は機械の発達により、背骨や大腿骨などの骨折しやすい部位の骨密度が測定できます。当院でも背骨と大腿骨両方から骨量を測定出来る装置を導入しました。検査は簡単で、寝ているだけで行えます。検査には放射線を使用しますが、胸のレントゲンを撮影するより被曝は少なくすみます。
骨密度検査の必要な患者さん
検査が推奨されているものは、
●65歳以上の女性
●危険因子を有する65歳未満の女性
と言われています。
危険因子の一例をあげると、
(1)骨折(手首、股関節、上腕骨など)の経験がある人
(2)家族に大腿骨骨折を経験した人がいる
(3)糖尿病、間疾患などの疾患を有する
などです。男性に関しては、女性と比較して骨量は減少しにくいといわれています。しかし、高齢であれば男性も骨粗しょう症になりえますので、心配があれば検査をしてもらっています。
治療開始の適応
骨密度の検査の結果で、骨折のリスクが高いと判断される患者さんが治療の対象となります。当院での骨密度検査の結果は図に表記されます。
具体的な治療法
内服での治療が主体です。骨粗しょう症に有効な内服薬が発売されているので、それを軸に、カルシウムやビタミンDなどを組み合わせる治療を行います。ただし副作用の問題や、歯科での顎骨壊死など、内服が困難な患者さんもいるので、内服に関しては主治医とご相談ください。注射薬も発売され、今後、治療内容も変化していくかもしれません。
普段の生活で骨折予防に重要なこと
まずは運動療法を行うことで、骨量減少を予防し、骨量を増加させる効果があります。また、筋力の維持によって転倒防止にも役立ちます。カルシウムやビタミンを十分に摂取するための、バランスのよい食事を取ることも重要です。また、転倒は室内での発生が多いため、室内の整理整頓は軽視しがちですが、重要な予防策になります。
骨粗しょう症治療でもっとも重要なこと
●骨折になる前の、自分の骨折リスクを早期に察知すること
●適切な治療を、中断することなく継続していくことにあると考えます。
現在も、高齢化時代といわれていますが、十分な骨粗しょう症治療がされずに、日々多くの骨折を治療している現状があります。骨折を予防し、人生の質を高め、今後の生活を送っていただきたいと願っています。