ワクチンは子どもたちへのプレゼント
2011年04月01日
長野中央病院 小児科 医師 番場 誉
ワクチンは人類の英知の結晶
人間がかかる病気で、ぜったい予防できるという病気は少ないのです。高血圧にしても糖尿病にしても、社会状況や生活スタイルを変えることである程度は減らすことはできても、簡単に罹らなくして好きな生活を送れるようになるものではありません。
ところがワクチンは違います。ワクチンが利用できる病気に対してそれをうまく使えば、そのあとは一切病気のことを忘れて生活できるのです。天然痘、ポリオ、ジフテリアなど、病気そのものを知らなくても生活できる世の中になったのは、ワクチンのおかげです。
ワクチンで予防できる病気は増えている
最近になり、それまでは避けられないか、かからないことを祈りながら生活していた病気であったものが、ワクチンで予防できて病気そのものを忘れて生活できるようになったものが増えています。
熱を出した子どもの中に見つかる細菌性髄膜炎をほぼ完全に予防できる「ヒブワクチン」「小児肺炎球菌ワクチン」がその代表例です。すでに日本で使用されはじめています。
また、新しくはありませんが、「おたふくかぜワクチン」「みずぼうそうワクチン」も外国の多くの国ではすでに全員の子どもも無料で接種するようになって、それらの国ではめったに流行しない病気になっています。
「ロタウイルスワクチン」は、日本では保育園や幼稚園であたりまえに流行する「感染性胃腸炎」の予防として、すでに外国では実用化されて効果をあげています。
改善すべきいくつかの課題
(1)自然にかかったほうが子どものため、という誤解
ワクチンで防げるのにそれを受けさせないのは、確率の問題とはいえ、不必要な生命の危険を子どもに経験させるという意味でおすすめできません。虐待をしつけと理由付けすることに似ていなくもありません。危険を冒さずに目的を達成するのは手抜きではありませんし、立派に目標を達成できるのです。
(2)同時に複数の接種を普及させる
細菌性髄膜炎ワクチンを含めてすべてのワクチンを受けるとなると、現状でも小学校に入るまでに25回もの接種となります。実は、髄膜炎ワクチンが導入されたころから、一度に2種類、3種類のワクチンを受けることはかなり普及しはじめました。1回に1種類という接種は、これからはなくなるでしょう。
(3)1回ですませていたワクチンが2回になっていく
これまで1回接種して終えていたワクチンも、より確実に一生効果を長続きさせるために、2回目の接種をすることが必要になってきます。数年前から麻しん(はしか)のワクチンは小学校に入る前に2回目を受けることになっていますし、おたふくや水ぼうそうのワクチンも1回から2回の接種に変更されることは、ほぼ確実です。外国ではすでにこれらのワクチンは2回、3回まで接種するのが普通になっています。
(4)すべてのワクチンは無料にしてほしい
子どもが助かる、親も助かる、そして病気そのものがなくなることで小児科医も助かる、国も助かる、まさに誰もが助かり、子育てが楽になる、それがワクチンの効果です。そんなワクチンこそ、希望した時にいつでもどこでも無料で接種できるよう、税金の無駄づかいを正して医療や福祉関係の予算を増やす国に変わってもらいたいと思います。日本はワクチン後進国ですが、それは、日本がある一面では医療福祉後進国であることの現れです。ぜひ世の中を良くする運動に取り組みましょう。