心房細動の新しい治療法

心房細動の新しい治療法パルスフィールドアブレーション(PFA:PulsedField Ablation)は、既存のカテーテルアブレーションにおける合併症リスクの低減が期待できる、新しい心房細動の治療です。長野中央病院では長野県内で初めて施設認定を取得し、2024年12月より治療を開始しています。

長野中央病院・循環器内科 医師 河内 千怜

従来の治療に比べ周辺組織へのダメージが少ない

心房細動は心臓の上部の部屋(心房)が不規則に早く収縮する状態で、血液の流れが乱れ、血栓ができやすくなり脳梗塞や心不全のリスクが高まります。これを治療するためにさまざまな方法がありますが、その一つが「パルスフィールドアブレーション」という新しい治療法です。

パルスフィールドアブレーションは、心房細動の原因となる異常な電気信号を取り除くために行われます。

従来のアブレーション治療では、高周波などの熱を利用して焼灼することで心臓の一部をやけどさせる方法が主流でした。しかし、パルスフィールドアブレーションでは、「パルス」と呼ばれる短い電気の波を使って異常な部位の細胞を破壊します。

この治療法の最大の特徴は、従来のアブレーションに比べて周囲の組織へのダメージが少ないことです。高周波アブレーションでは周囲の血管や組織も加熱され、やけどや出血のリスクがありましたが、パルスフィールドアブレーションではそのリスクが低減されます。

心房細動の症状が改善し、再発リスクも減少

パルスフィールドアブレーションは比較的短時間で治療を完了することが多いです。痛みや咳反射が強い治療法のため、当院では全身麻酔を用いて行っています。

治療の手順としては、まず血管からカテーテルと呼ばれる細い管を心臓に挿入します。そのカテーテルからパルスを心臓に送ることで、異常な電気信号を取り除きます。治療後は心房細動の症状が改善し、再発のリスクも減少することが期待できます。

心房細動のタイプや症状で選択

パルスフィールドアブレーションは新しい治療法であり、研究段階で効果や安全性が確認されているものの、すべての患者に適応できるわけではありません。心房細動のタイプや状態によっては、従来のアブレーション方法が選ばれることもあります。

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