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ヒートショックを予防して快適な入浴を

長野中央病院・内科 医師 天笠 諒

「風呂キャンセル界隈」より入浴を

大谷翔平選手が記録した「50-50」や政治とカネをめぐる「裏金問題」と並んで2024年の流行語大賞にノミネートされた「界隈」。近年、Z世代を中心にこの「界隈」という言葉が使われているようだが、昨年而立(じりつ)を迎えた私は、どうやら時代に取り残されたらしい。

寒暖差の生まれる場所

冬場の浴室

Yahoo!検索では、昨年5月が「界隈」を含む検索数が最も多く、なかで最も多かったのは「風呂キャンセル界隈」であった。風呂に入るのが億劫で、入らない(キャンセル)日があることを意味する。

しかしながら昨年10月に地元埼玉から極寒の地、長野に移住した私にとって入浴は、寒さ対策はもちろん健康維持のためにはこれまでになく貴重な時間となっている。もともと風呂は好きで、今年もスーパー銭湯で箱根駅伝を眺めながらこれまた若者の間で人気急上昇中の温冷交代浴(サウナ→水風呂→外気浴)により「ととのう」状態で年始を過ごした。

日本サウナ学会代表の加藤医師によれば、温冷交代浴は短時間でめまぐるしい体内の変化(血流や心拍、血圧、自律神経など)を反復することにより得られる快感に加え、瞑想(ストレスや不安の軽減、脳疲労をとるなどに関与)に近い状態をも作り出す優れものだそう。

雪の中震えながら帰宅した日の入浴だけでも十二分に効果を実感している私にとっては朗報で、風呂キャンセル界隈の方々に是非お伝えしたいが、「この原稿キャンセル界隈」が関の山であろう。

予防は入浴時の寒暖差を少なく

一般的にヒートショックとは、寒暖差により血圧が乱高下することで、心臓や血管に負荷がかかることをいう。

この急激な血圧変動により、脳内出血/梗塞や大動脈解離、心筋梗塞など発症リスクが高まり最悪の場合、命を落とす可能性がある。特に冬場(11月~3月)の入浴時に発生しやすく注意が必要である。昨年12月に54歳という若さで亡くなった芸能人の訃報からも長寿県・長野とはいえ油断は禁物である。

対策は、この寒暖差が生まれないように工夫することである。すなわち、入浴前に脱衣所と浴室を温める、かけ湯をしてから湯船に入る、湯温を41℃以下に設定し、つかる際は胸のあたりの高さまでにするなどが挙げられる。

ここまで書くと、風呂キャンセルが一番の予防にさえ思えてくる。いや、キャンセル界隈のZ世代の皆さん、毎日とはいかないがリスクを減らして50-50ではどうか。少なくとも参院選の投票率は50-50で。

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