ここまできた心房細動治療 当院でクライオバルーンアブレーション開始
2016年03月01日
長野中央病院 循環器内科 医師 河野 恆輔
心房細動の危険性
突然ドキドキしたり、さらにめまい、息切れがする―それは心房細動という不整脈かもしれません。心房細動はほっておくと心臓の中に血栓ができて脳梗塞になったり、心臓の動きが悪くなって心不全になったりします。認知症になる危険を増やす可能性もあります。しばらくすると良くなるから、最近はあまり症状がない―そういう方もほっておくと取り返しがつかない合併症を起こすことがある―これが心房細動なのです。
心房細動が続くと、もっとも怖い合併症は脳梗塞です。そのため動悸などの症状に乏しくても、一定の年齢以上の方や高血圧、糖尿病などがある方は、抗凝固療法といっていわゆる「血をサラサラにする」薬を飲む必要があります。症状が強くて心房細動がでたり元に戻ったりする方は、不整脈を抑えるお薬を使うことがあります。
心房細動の原因
では心房細動を根治することはできないのでしょうか。そのためには心房細動が起こるもとを知る必要があります。
心房細動は心臓の4つの部屋(右房、左房、右室、左室)のうち、左房にある肺静脈(肺から血液が戻ってくる静脈)から起こる不整脈が原因と考えられています。肺静脈から脈が飛ぶような不整脈が出ると、左房にその刺激が伝わって、それが心臓の電気的な不具合を起こして心房全体に伝わります。それが心房細動なのです。ですから肺静脈の不整脈を退治すれば心房細動が起こらなくなります。
新しい治療法を開始
治療としては、カテーテルで肺静脈からの電気的な信号が伝わらなくする、電気的肺静脈隔離術が行われます。
肺静脈は左右に2本ずつ、合計4本あります。今まではカテーテルからの熱で、肺静脈の周りを線状に焼いていく方法(高周波カテーテルアブレーション)がとられていました。
最近はこれに加えて、4本の肺静脈の入り口に順番に風船(バルーン)を押し当て、マイナス50℃前後に凍らせるクライオバルーンアブレーション(冷凍凝固風船治療)が行われています。こちらの方がより安全で治療時間も短く、その後の心房細動の再発が少ないといわれています。
当院でも昨年12月からこの治療法を開始しました(長野県では信州大学と当院のみ)。心房細動と言われてから、より早いうちの治療が有効と考えられていますので、お早めにご相談ください。