腎臓の病気

長野中央病院 腎・代謝・内分泌内科 医師  中山 一孝

腎臓のはたらき

腎臓は、そら豆の様な形をした握りこぶし大の臓器で、からだの背中がわ、腰の辺りに左右対称に2個あります。からだを流れる血液を24時間休むことなく濾過しつづけ、老廃物や塩分を尿として体の外に排出する一方で、必要なものを再吸収することで体を維持する大切な働きを担っています。

また、塩分や水分の排出量を調整したり、血圧を調整するホルモンを分泌することにより血圧を調整したり、造血ホルモンを分泌して血液のなかの赤血球の数を維持したり、ビタミンDを活性化して骨を丈夫に保つ働きもしています。

新たな国民病「慢性腎臓病(まんせいじんぞうびょう)」

このようにいくつもの重要な役割を担っている腎臓ですが、原因不明の腎炎や、高血圧・糖尿病・高脂血症・肥満・痛風・喫煙といった生活習慣病などによって徐々にその機能が失われていく、それが「慢性腎臓病」です。

初期のまったく無症状の段階から、かなり進行した末期のものまでさまざまな段階を含んで一括りに呼んでいますが、日本人の成人のおよそ8人に1人が何らかの慢性腎臓病を有していると考えられており、新たな国民病として注目されるようになってきました。

慢性腎臓病の早期発見

慢性腎臓病の診断には、尿と血液の検査が必要です。健康診断の検尿で尿蛋白を指摘されたり、血液検査で腎臓の働きを示す数値の低下を指摘された場合、特に、これまで健康でかかりつけの病気のないような人は、必ず一度は内科の外来を受診することをお勧めします。

慢性腎臓病が進行すると、夜間尿・むくみ・貧血・倦怠感・息切れなどの症状が現れてきますが、こうした症状が自覚されるときには、すでに慢性腎臓病がかなり進行している場合も少なくありません。腎臓は、ある段階まで悪くなってしまうと、自然に治ることはありませんが、食事療法や禁煙など生活習慣の改善、薬の追加・調整などによって病気の進行を緩やかにすることが、慢性腎臓病の治療の上でとても重要です。

慢性腎臓病が進行すると

慢性腎臓病の患者さんは、そうでない人と比較して、脳卒中や心筋梗塞などの脳心血管疾患を発症する危険度が非常に高くなります。また免疫力の低下から感染症も合併しやすくなるため、入院回数や総死亡率が数倍になることが知られています。

慢性腎臓病が進行し、腎臓が充分にその役割を果たせなくなった状態を腎不全と言います。腎不全になると食事の内容や、摂取する水分などを制限する必要があります。さらに腎臓の働きが低下すると、腎臓の働きを代替する治療(透析療法や腎移植)が必要となってきます。 腎移植は、手術を受ける上での年齢的な制限や移植腎の提供の問題などから、 まだまだ数は少なく、末期腎不全に至った患者さんの多くが透析療法を受けています。透析療法には血液透析と腹膜透析の2つの種類があります。どちらの治療法を選択されるかは、患者さん自身の仕事や、日常生活のスタイル、ご家族による介護状況などに応じて、医師と相談の上で決めて頂いています。

腎臓病を悪化させないために

慢性腎臓病は、その初期には自覚症状に乏しい病気ですが、進行して腎臓機能がある程度まで低下してしまうと、腎臓はもとに戻る事はありません。したがって、早期発見・早期治療によって、腎臓の機能を低下させないことが大切になってきます。

職場や自治体による定期健康診断や、地域の班会での健康チェックなどを積極的に利用し、早期の発見とその後の適切な治療・相談につなげていきましょう。

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