腰痛の本当の原因は?腰痛とどうつきあうか。

長野中央病院 整形外科 医師 水谷 順一

腰痛の種類

人生に一度は腰痛を経験すると言われます。腰痛にはいろいろな種類がありますが、大きく『激痛系』と『鈍痛系』に分けられます。

通院している患者さんは圧倒的に鈍痛系が多いのです。なぜなら、激痛系は短期間で良くなることが多いからです。逆に、鈍痛系はなかなか良くなっていない患者さんが多いということです。治療しているのに通院が長く続くのは、実は、治療が功を奏していない場合が多いと思われます。

改善しにくい 「鈍痛」

病気を治療するためには、その原因を特定することが必要です。

たとえば、鈍痛系の腰痛で一般的に整形外科を受診すると、たいてい腰のレントゲンを撮ってくれます。 「腰の骨が傷んでいるせいでしょう」といった説明をされます。 「なぜ傷んでしまったのですか?」と聞くと「年のせいでしょう」と返事がきます。患者さんは「なんとか治してください」となります。先生は、 「では治療しましょう」と言って、多くの場合、電気をあてる、温める、マッサージ、注射などの治療が行われますが、なかなか改善しないことが多いようです。

痛みの原因は多岐に渡る

こうした治療が上手くいかない最大の理由は、痛みの原因を正しく把握できていないことにあります。

鈍痛の原因は、腰椎の加齢現象だけではありません。筋肉量の低下、動脈硬化、神経痛、骨粗しょう症、内臓痛、精神的重圧、社会的な立場など、原因となる候補は、実はたくさんあるのです。多岐に渡っているために特定は困難です。原因が特定できない以上、治療法を決めることはできません。

原因がわからず、やってみないと効くかどうかわからない治療は、「ムダな治療」であると言わざるを得ません。本来、する必要は無いわけです。

腰痛とうまく付き合うには

ではどうすれば良いのでしょうか。原因が特定できない、ということを、患者さん自身が認め、納得していただくことです。私たちは、出来る事を患者さんと一緒にやっていきましょう、というスタンスです。

具体的には「痛みを抑えるお薬を出します」とお伝えします。そう伝えられたとき、「そうか完璧には治せないのか、じゃあ仕方がない、なんとかやっていこう」と『折り合い』をつけていただくことがとても大切になります。そのような気持を持つことで、うまく腰痛と付き合っていけることでしょう。

最後に、鈍痛系の腰痛は大事にして休んでいるとますます悪化してしまいますので、なるべく身体を動かすようにしてください。

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