心不全手帳始めました。

長野中央病院・循環器内科 医師 齊藤 和紀

心不全とはどういう病気か

心臓は、全身に血液を循環させるためのポンプの役割をする臓器です。心不全とは心臓のポンプ機能がうまく働かず、全身の血液の循環が滞ってしまう状態のことです。高血圧、狭心症、心筋梗塞、弁膜症( 大動脈弁狭窄症など)、 不整脈( 心房細動など) が主な原因をしめますが、他にも先天性心疾患や心臓の変性疾患など、すべての心臓病の進行した先に心不全という状態があります。

心不全を発症すると、急性期には原因を取り除く治療や心臓の負担をとる治療を行います。しかし、心臓を根治させることは難しく、慢性心不全として長期的につきあっていく必要がある人がほとんどです。慢性期の安定を維持するためには、定期的な自己管や、医療機関での定期的な検査を行い、 急性増悪する前に早期の段階で治療介入をする必要があります。

「心不全手帳」で増悪を察知し連携

患者さんご自身や医療者が、心不全の増悪をよりはやく察知するために、当院では心不全手帳の運用を始めました。毎日の血圧の記録欄のほか、 体重、自覚症状など、心不全の経過をみていくうえで重要となる指標を書いていただきます。

また、心不全手帳には、心不全の原因となった病気、心臓の超音波検査やカテーテル検査の結果以外にも、栄養指導の情報、運動処方の内容、また介護の情報も記入します。

これにより、かかりつけ医の先生と長野中央病院での情報共有ができるのみでなく、介護スタッフや訪問看護師との連携も可能となります。

地域ぐるみで心不全パンデミックを予防

心不全は高齢になるほどかかりやすくなります。日本でも高齢化に伴い、年々患者さんが増加し、心不全パンデミックが到来するのではないかと言われています。急性期病院のスタッフだけでは、地域の慢性心不全の患者さんの管理をすべて行うことは、マンパワー的に無理があります。

しかし、 かかりつけ医や地域の医療介護スタッフ、患者さんにも心不全手帳を通じて協力していただくことにより、地域全員の心不全増悪を予防し、早期に対処する循環器診療を行うことができると考えます。患者さんにとっては日々の測定を行うことや、受診の際に心不全手帳を忘れず持参することは大変だと思いますが、 ぜひご協力をよろしくお願いいたします。

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