不眠症について

「寝つきが悪い」「夜中に何度も目が覚めてしまう」「朝起きたときにしっかり眠った感じがしない」など、日々の外来では眠りに関する悩みを訴える方が多くいます。「不眠症です」とはっきり言われる方もいます。今回は、「不眠症」についてお話ししたいと思います。

長野中央病院 総合診療科 部長 池田 徹

不眠症とは

医学的には、不眠症とは「1.長期間にわたり夜間の不眠が続く」「2.そのために日中に精神や身体の不調を自覚し生活の質が低下する」の2つがそろった状態をいいます。逆に言うと、睡眠時間が短いだけで日中の生活に支障がなければ不眠症ではありません。

必要な睡眠時間は変化する

一般に人間の必要な睡眠時間は年齢とともに減少します。いくつかの調査では、平均の睡眠時間は20代では7時間程度ですが、60代では6時間程度との結果も出ています。「以前は8時間寝ていたのに近頃は6時間で目が覚めてしまう」というのは、不眠症ではなく加齢に伴う自然な変化かもしれません。また、必要な睡眠時間には個人差も大きく、10時間の睡眠が必要な人もいれば4時間程度でも十分な人もいます。「〇時間眠らなければならない」と決まった数字があるわけではないのです。

不眠症への対応

先に述べた2項目があれば不眠症、ということになりますが、ここでも注意が必要です。例えば、高血圧症と診断されてもすぐに降圧薬内服開始、ではなく減塩・運動など生活習慣の改善による治療から始まるように、不眠症なら睡眠薬による治療、ではなくいくつかの生活習慣の見直しから始めます。

例えば、1.カフェインには覚醒作用があるので夕方以降にお茶やコーヒーは飲まないようにする、2.決まった時間に寝るようにするのではなく、眠くなったら布団に入る、3.起床時刻は守る、4.昼寝は30分程度にする、などがあげられます。

睡眠薬について

このような対応をしても十分な睡眠を得られず日常生活に支障が出てしまうようなら薬物治療を行うこともあります。近年ではさまざまなタイプの睡眠薬が出ていますので、不眠のタイプに合わせて使い分けが必要です。睡眠薬の種類によっては、長期間使用していると逆に睡眠薬がないと眠れなくなることもあるので、必要な睡眠が得られるようになったら終了することも大事です。すでに長期間服用している場合には、急にやめてしまうとかえって不眠となってしまうので、1錠から0.5錠にするなど徐々に減量していくことが必要です。

不眠症に悩む人は多いのですが、適切に対応すれば生活の質を大きく向上させることもできます。お悩みの方は生活習慣・睡眠時間など確認したうえで一度主治医にご相談ください。

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