年に一度は便潜血検査を

長野中央病院 消化器内科 医師 遠藤 湧斗

早期発見で治癒率アップ

2021年のデータによると、日本人の死因の第一位は癌であり、およそ3~4人に1人が癌で亡くなっています。その中でも大腸癌は、臓器別の死亡者数で上位に入ります。この大腸癌による死亡率の増加を抑えるために市町村などの行政により、住民検診や企業検診、人間ドックなどで大腸癌検診が広く行われています。

大腸癌は早期の段階で治療を行えば、高い確率で治癒ができます。この早期の大腸癌を発見するために便潜血検査が有用とされています。大腸癌は、早期の段階では自覚症状がほとんどありません。検査を受けることが大切です。

見えない出血を検出

便潜血検査は、消化管のどこかで出血が起きていないかを調べる検査です。肛門から血液が流れ出たり、真っ赤な便が出たりすれば、誰でも心配になると思います。しかし、この便潜血検査は目では見えないごく微量の血液をも検出します。見た目に異常がなくても、体の中の異常を発見することができます。

陽性の場合、大腸癌などが疑われるため、大腸カメラといった検査が必要になります。内視鏡による検査は、負担のない検査ではありませんが、病気の発見のためには必須の検査です。

年に一度の検査が大切

便潜血検査は信頼度の高い検査ですが、陰性であっても、大腸にまったく異常がないと言い切ることはできません。あくまで、便を採取したその時に出血をしていなかったということであり、その時の状態を点でみているに過ぎないのです。そのため、年に一度は検査を受けることが大切です。

現代の食習慣の変化に伴う肉食中心の生活は大腸癌のリスクです。若い人でも大腸癌を患ってしまうこともあり、40歳を超えるとリスクが高くなると言われています。40歳以上の方は、大腸癌検診として年に一度便潜血検査を受けるようにしましょう。

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