スギ花粉症の治療~特に小児や妊婦・授乳婦に関して~

3月から4月がスギ花粉症のピークです。実は秋にも少量ですがスギ花粉は飛びますので秋に症状を感じる方もいます。いずれにしてもスギ花粉症の方にはこれからいやな季節がやってきますが、今回は小児やそのお母さん方を念頭にお話しします。

長野中央病院 小児科 医師 番場 誉

薬による治療の基本は飲み薬と点鼻薬

現在は眠気の少ない飲み薬がいろいろありますので、それらを用いた治療が中心です。中には飛行機のパイロットでも使用できるほどのものもあります。軽症の方は花粉飛散開始予測日あたりからの使用で十分ですが、重症の方は飛散予想日の1~2週間前からの使用も推奨されます。長野市あたりの花粉飛散開始予想は、通常2月下旬から3月上旬です。

飲み薬の中には胎児への悪影響がほとんどない種類がいくつかありますので、これから妊娠をお考えの方でもそのような種類であれば使用していて問題ないでしょう。妊娠がわかってからは原則として薬を用いない対処に切り替え、妊娠4、5ヶ月以降で薬が必要な場合は点鼻薬や点眼薬という目や鼻に直接使用する薬を少量使用することは許容できます。授乳中には適切な飲み薬を用いることもできます。

子どもは早いと3歳ごろから花粉症がはじまることがありますが、その頃になると大人と同じように眠気の少ない飲み薬を用いての治療が可能です。鼻詰まりにお困りの場合は、飲み薬でもより鼻詰まりに効くタイプを併用したり、嫌がる頻度は大人にくらべて高いものの、やはり点鼻薬を用いる治療もよいでしょう。

※飛散開始日:1cm2あたり1個以上のスギ花粉を2日連続して観測した場合の最初の日(日本気象協会ホームページより)

舌下免疫療法(アレルゲン免疫療法)

これまでの薬の治療効果には個人差もあり、必ずしも満足に効かない場合もあります。またどうしても眠気が気になるという方もいらっしゃいます。

そのような方の選択肢として、舌下免疫療法というアレルギー体質をおちつかせる治療があります。家での飲み薬、正確には口の中、ベロの下で1分間溶かして服用する、という治療ですが、これを花粉の飛ばない時期を含め、通年で年ないし3年程度以上毎日根気よく続けることができれば、治療中から、あるいは治療をやめたあとでもスギ花粉症が軽くなることが高率に期待できます。

治療の開始はスギ花粉の飛散しない時期と限定されていますので、夏以降、秋か冬から開始する必要があります。当院では現在小児科で小児(5歳以上、18歳ごろまで)を対象に行っていますので、薬の効きが悪いとか薬を減量したいという方は気軽にご相談ください。

最初の受診時はスギ花粉症かどうかを確認するだけなので治療は開始しませんが、治療をすることになったらあと2~3回ほど受診しながら治療を開始し、そのあとは1ヶ月に1回程度の定期的な受診を2~3年続けます。途中で転居することになっても、紹介により継続してもらうことも十分にできますので、転勤族の方でも大丈夫です。

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