「胸痛」と「気胸」の話

8月お盆の時期は、お子さん・お孫さんの帰省などもあり、束の間の団欒を過ごせる貴重で楽しみな時期でもあると思います。そんな時に気になる胸痛、特に「気胸」のお話をしたいと思います。

長野中央病院 外科 医師 角岡信男

若い人に突然発症

胸には心臓、大きな血管、そして肺があります。肺は胸壁というカプセル(胸腔)の中に、縁日で売られているビニール(胸膜)に入った綿菓子(肺)のように存在しています。そのビニールの一部が、焼き餅でできる風船(ブラ)のように膨らんで弱くなって、突然破れることがあります。ここで胸痛が出てきます(図1・2)。

この破れた風船部分から吸った空気が漏れ出ます。この肺から漏れ出た空気は、カプセルの中で溜まり、柔らかい肺自身を押しつぶします。そのため、息苦しい感じを訴える形となります(図3)。

この一連の状態を「気胸」と言い、比較的若い方々に多い病気です。突然起こるので驚くとともに、不安感の強い病気です。

発症した場合の対応

対応としては、病院を受診していただき、胸のレントゲンをとって診断をつけます。肺の縮み具合が軽ければそのまま安静で外来通院としますが、ある程度進んでいるようなら入院し、そのカプセルの中に局所麻酔をしてストロー(胸腔ドレーン)を入れ、空気を外に出してやると肺が膨らんで息苦しさが楽になります。

次は〝風船〟があるかどうかをCT検査で評価します。空気漏れが続いていたり、気胸をなん度も繰り返す場合は、風船を切除してしまう手術をお勧めします。しかし、手術をせずに破れたこの風船が残ってしまうと半分くらいの方は再発することから、手術で再発率を10分の1程度にできるので、風船がある場合も手術をお勧めしています。

全身麻酔は必要ですが、大きな傷ではなく、胸腔鏡手術といって小さい穴を3カ所開けて、破れた風船を自動縫合器という器械で切除する1時間かからない手術で、退院も数日と、負担が非常に少なくて済むのが特徴です(図4)。

お父さん、お母さんも禁煙を!

一方で、お父さんお母さんでは、タバコを長いこと吸われた方にもたくさんの風船ができているので、気胸も起こりえて、同様の症状が起こります。タバコは肺癌や血管の病気を起こしやすくなることから、まずはぜひ禁煙をされるのは良いと思います。

せっかくの楽しい家族団欒が長く続きますように、もし症状がありましたら早めの受診を心がけましょう。

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