肉離れにご注意を
2024年06月28日
長野中央病院 整形外科 医師 水谷 順一
運動に良い季節になりました。今回は肉離れについて書こうと思います。サッカー、野球、ゴルフその他色々、準備運動なしで始めていませんか。時間ギリギリに集合、ビール片手に応援、さあ出番だといきなりダッシュ。突然足が痛い!よくあるのが肉離れ、アキレス腱断裂です。
最も重要なのは 受傷部を動かさないこと
肉離れとは筋断裂の一般名です。断裂すなわち筋肉が一部または全部切れてしまう状態です。多くが大腿四頭筋(大腿前方の筋)、ハムストリング(大腿後面の筋)、腓腹筋(ふくらはぎの筋)に起きます。症状は急に出現する激しい痛みです。力を入れたり、断裂した筋を伸ばすと強い痛みが出ます。筋疲労と違って急に出現し、休んでも改善しません。
原因は筋肉が伸びている状態で力を入れたことです。筋肉はストレッチ等で十分に伸展、収縮を準備しないとスムースに動きません。運動前には十分な柔軟体操をしましょう。
受傷した場合、急性期には血種を減らす目的で患肢の挙上、冷却が推奨されています。しかし最も重要なのは、急性期を含めて受傷部を動かさないことです。テーピングして動かす人がいますが、筋の損傷が原因の痛みであれば治癒までの期間を長くする間違った選択と言えます。
焦りは禁物! 治癒には3カ月必要
ここからは治癒過程の話です。断裂部には隙間ができます。縫合などによって隙間が無いようにできれば最も早く治癒を見込めますが、筋肉では不可能です。筋に力を入れたり、伸ばす動きをすると隙間が広がるのはわかると思います。だから動かすと痛いし、なかなか治癒しないのです。隙間は最初に血種で埋まります。血種が次第に繊維組織へと変化して筋組織が接着されます。ここまで約1カ月かかります。
この時点で痛みは無くなります。触ると断裂部に硬いしこりを触れ、圧痛が有る時もあります。この時点では筋肉本来の強度は無いので、治ったと勘違いして急に運動を再開して再断裂する人がたくさんいます。いい加減なスポーツトレーナーに多い運動再開の指示ですね。実際に繊維組織が筋組織に変わるまでは受傷から3カ月近くかかりますから、スポーツ選手が肉離れで3カ月離脱するのは正しい判断で、焦って1カ月で復帰してすぐ故障するのは当たり前です。
という訳で、肉離れは受傷すると元通りになるまで3カ月かかります。くれぐれもストレッチをお忘れなく。