気管支喘息と吸入ステロイド薬について
2019年06月01日
長野中央病院 呼吸器内科 医師 近藤 知雄
吸入薬の発達で死者が減少
気管支喘息 ( 以下喘息 )とは、空気の通り道(気道)に好酸球(白血球の一種)による炎症が生じ、気道が狭くなってしまう病気です。
日本人の成人の9~10%が喘息です。症状は、気道が狭くなるので、ヒューヒューと苦しくなったり、ひどい咳が出ることがあります(喘息発作と呼びます)。
1990年代の日本では、喘息によって年間5000人を超える死者を出していました。しかし、吸入ステロイド薬を主体とする吸入薬の発達により、どんどん喘息による死者が減り、ここ数年は約1500人まで減少してきております。これほど、吸入ステロイド薬のお陰で死者が減ってきているのにも関わらず、喘息診療の問題点の一つとして「吸入ステロイド薬の中断」があります。
吸入ステロイド薬中断は危険
喘息症状がよくなってしまうと、患者さんの判断で吸入ステロイド薬をやめてしまう事があります。症状が無ければ喘息は治ったと思われるかもしれませんが、症状がなくても気道が常に炎症を生じている状態です。
この状態が続くと、いずれまた、喘息発作が起こり日常生活・社会生活に影響がでます。そして、炎症が続く期間が長くなると、気道が狭く固くなってしまいます(これを気道リモデリングといいます) 。気道リモデリングが生じてしまうと、苦しい時に気管支を広げる薬を使用しても気管支が広がらず、喘息治療の主役である吸入ステロイド薬も効かなくなってしまいます。こうなってしまうと、常に喘息症状により日常生活に支障をきたしてしまう危険性があります。吸入ステロイド薬を継続することは、この気道リモデリングを防ぐためといっても過言ではありません。
ステロイド薬の副作用は心配ない
また、吸入ステロイド薬をやめてしまう理由の一つとして、 「ステロイド薬」と聞くと副作用のことを過度に心配し吸入をやめてしまう方がおります。 しかし、全身に薬がまわる内服や注射と違って、吸入ステロイド薬は口から喉、気管支と限られた範囲内にとどまります。また、薬剤の量が極めて少量という特徴がありますので全身への副作用に対して過度な心配はいりません。
今まで、喘息症状に悩まされていた方で当科に受診され吸入ステロイド薬をしっかり使うようになったところ、喘息症状に悩まされることなく日常生活を過ごされるようになった方はたくさんいます。
喘息の方は、吸入ステロイド薬の必要性をしっかり理解し継続していきましょう。そして喘息症状に悩まされることなく、日々の生活でベストパフォーマンスを出しましょう!