立ち上がり訓練の重要性『間違いだらけのリハビリテーション』
(三好正堂氏)に学ぶ
2019年05月01日
長野中央病院 リハビリテーション科 医師 中野 友貴
自分の筋肉を鍛えましょう
リハビリテーション分野の専門医、三好正堂先生は、一貫して「起立―着席運動」 (以下「立ち上がり訓練」と表記)の重要性を強調し、体力、筋力を鍛えることに重点をおくべきと主張されています。
近年、リハビリテーション分野の学会では、 高機能ロボットや特殊な手技で手足の麻痺の改善を目指す研究に注目が集まる傾向にあります。一方で、三好先生は、自分自身の筋肉をどれだけ自分で動かし、残された筋力を鍛えるか、というところにこそリハビリテーションの本質があると強調します。
そのための大切なとりくみが立ち上がり訓練なのです。65歳までは1日400回から600回の立ち上がり訓練をするように勧め、それ以上の年齢の方は200回以上を目指すと言及されています。一口で400回~600回と言ってもこれはなかなか簡単ではありません。
大腿骨骨折の高齢患者さんも歩けた!
回数をかせぐ一つの方法は集団での立ち上がり訓練です。当院の5階病棟(回復期リハ病棟)では、毎日午後、職員の声かけと見守りのもと、入院患者さんが集団で30分間の立ち上がり訓練を行っています。
もう一つの方法としては、個人で取り組む自主トレです。当院リハビリテーション科オリジナルの自主トレ表を作り、入院患者さんにお渡しし、入院中に取り組んでもらっています。90歳代の脳卒中の患者さんが毎日200回がんばって取り組んでいます。80歳代後半の大腿骨骨折の患者さんも、毎日400回繰り返し続けることで歩けるようになりました。
この自主トレ表は、空欄に日々数字を埋めていく充実感があり、根気よく立ち上がり訓練を続けることができます。これを外来の通院患者さんにも勧めていますが好評です。
たまに「立ち上がりをやると膝や腰が痛い」と訴える方がいますが、イスの座面に座布団を入れるなど、座面を高くしてやることで痛みをやわらげる高さを見つけることができます。そうした無理のない高さで立ち上がりを繰り返すことで、筋力が付き、膝や腰の症状も改善が期待できます。
健康な人にも効果大!
立ち上がり訓練は、特に疾患のない健康な方にも、日常の健康づくりの一環として、おすすめできるものです。
これを継続することで高齢になってからさまざまに起こってくるトラブルを乗り越えることができます。立ち上がり訓練には筋力と体力を強くし、日常生活能力を向上させ、転倒しにくくする効果があり、受け身の訓練を主体的なものに変える効果があります。
日々の健康づくりに、立ち上がり訓練をおすすめします。