『歩く』を守るということ。下肢動脈疾患と治療について。
2020年03月01日
長野中央病院 循環器内科 小笹 祐
最近話題の足梗塞
血糖値や血圧が高い人、コレステロール値の高い人、喫煙者は要注意!
脳梗塞、心筋梗塞に次ぐ第3の梗塞が話題になっています。それは″足梗塞”(閉塞性動脈硬化症)と言われる病気です。全身の動脈硬化の進行とともに、足の血管が細くなり、足先まで十分に血液が行き届かなくなる病気です。国内の患者数はおよそ300万人と言われています。
『年かな?』ではなく『病気かな?』
閉塞性動脈硬化症の症状は、大きく2つに分類されます。
歩いていると足が痛くなり、休まなければ歩き続けることができない『間欠跛行』と、足の先に傷ができる『下肢潰瘍』とがあります。『下肢潰瘍』は、糖尿病の方や、 高齢の患者さんに多く、気づかないままに潰か いよう瘍から壊え疽そ(腐った状態)へと進行し、足を切断しなければならない事態に陥るという場合もあります。
『足』ってどうなっていたか?定期的な足のチェックを。
1.自宅でのチェック
足背動脈や後脛骨動脈の触れが弱くなり、足先に血液が届かないため、栄養が不足して足指や甲などの毛が薄くなることがあります。
2.病院でのチェック
足背動脈や後脛骨動脈の触れが弱くなり、足先に血液が届かないため、栄養が不足して足指や甲などの毛が薄くなることがあります。
(1) ABI(足関節上腕血圧比)
足関節と上腕の血圧を測定し、比を計算し、0.9以下で閉塞性動脈硬化症を疑います。10分程度で検査は終わる、簡便で侵襲度の低い検査です。
また、異常値であるABI0.9以下の患者さんの約半数に、心臓病ないし脳血管障害が隠れていると言われ、ABI0.9以下の患者さんの5年生存率は、大腸がんの5年生存率(69%)と同等であることが知られています。
検査をお勧めします。
・65 歳以上の高齢者
・50 歳~ 64 歳の喫煙者で糖尿病がある人
・脚の痛みや歩行障害がある人
・高血圧や脂質異常症を長期間治療している人
・透析療法を受けている人
上記の全ての方がABI 検査を推奨されています。
(日本脈管学会のガイドラインより)
(2)下肢動脈造影CT検査
造影剤を用いたCTの検査です。下肢動脈の狭窄や閉塞している部分をしらべます。
(3)下肢動脈アンギオ検査
直接、下肢の動脈にカテーテルを挿入して造影剤を注入し、血管が狭くなっていたり、詰まっている部分がないかをしらべます。CTに比べより詳細な情報を得ることが可能です。
どのように治療するの?
治療は大きく4つに分かれます。
1.内服治療
血液をサラサラにするお薬(抗血小板薬)や末梢循環を改善するお薬を使用します。
2.経皮的下肢動脈再建術
狭窄・閉塞が生じている血管を、内側からバルーンカテーテル(風船)で膨らませ拡張し(風船療法)、ステントと呼ばれる金属のメッシュをおいて拡張性を維持します(ステント治療)。2018年夏から19年にかけて、一般的な風船のほか、再狭窄を予防するお薬を塗ってある風船(薬剤コーティングバルーン)や、ステント(薬剤溶出性ステント)、ステントグラフトなどあたらしい治療道具が日本でも使用可能になりました。欧米や、日本の最先端施設での治療成績は、これまでの一般的風船療法・ステント療法をはるかに凌ぐ良好な成績が報告されており、期待を集めています。
3.下肢動脈バイパス術
手術によって、詰まった血管の前後を人工血管につなぐことによって 血流の改善をはかります。
4.リハビリテーション
痛みがあっても、歩行することは大切です。ただし、足の先に傷・潰瘍がある場合は歩行を制限する場合があります。
『歩く』ことを守ることが精神的な健康にもつながります。まずは簡単な検査から受けてみてはどうでしょう。