新型コロナウイルスとその感染予防

長野中央病院 院長・小児科医師 番場 誉

新型コロナウイルスとは

コロナウイルスは、もともと普通の風邪を引き起こす数種類のウイルスの仲間です。一般的な風邪の10~15%がコロナウイルスによるものといわれています。

今回問題となっている新型コロナウイルスは、2019年12月末から世界各地に広がった新しいコロナウイルスです。

これまでにもコロナウイルスの新種は発生していて、02年に発生したSARS(サーズ)や、13年以降に発生したMERS(マーズ)といった肺炎を特徴とする重篤な病気がそれでした。しかし、人への伝染力がインフルエンザなどに比べてとても弱く、拡大速度が遅かったため、限られた地域に封じ込めることに成功しています。

新型コロナウイルスはそれらに比べると重症になる頻度は少ないようですが、伝染力は通常のインフルエンザと同じ程度にあって比較的流行しやすいウイルスであると言え ます。これまでのところ、かかった患者さんがみな重症になるものではない事もわかっています。高齢者では重くなりやすいのですが、子どもは重症になりにくいようです。 この傾向はSARSやMERSでも見られ、子どもも重症化しやすいインフルエンザとは違うようです。

人から人へ風邪やインフルエンザと同じように感染します

今回の感染経路は、飛沫感染と接触感染の2つが考えられています。これは普通の風邪と同じです。飛沫感染とは、感染者のくしゃみ、せき、つばなどと一緒にウイルスが放出され、他の人がそのウイルスを口や鼻から吸い込むことで感染する経路です。接触感染とは、感染者が自分のくしゃみなどをおさえた手で身の回りの物を触るとそこにウイルスが着き、感染していない人がそこに触れ自分の口やのどに運んでしまうことで感染する経路です。

感染症の中には、空気感染という大変容易にうつりやすい経路のものがありますが、幸い新型コロナウイルスはそのようなうつり方はしないようで、換気の良い場所ではそう簡単にうつることはなさそうです。逆に狭い換気の悪い室内で人の多い環境は一気に流行しやすいようで注意が必要です。

再度繰り返しますが、これは通常の風邪やインフルエンザでも同じです。ですから、予防法は通常の風邪と同じです。

感染予防方法も風邪やインフルエンザと同じです

風邪やインフルエンザと同様の予防策が新型コロナウイルスにも有効です。具体的には、石けんによる手洗い、手指消毒用アルコールによる消毒が有効です。

症状がある人はくしゃみや咳を手で覆ったり鼻をかんだ後には手を洗って、周囲にウイルスがうつらないようにしてください。健康な人は患者さんの周囲や公共の設備などに触れた後にはこまめに手を洗ってください。

マスクは風邪症状のある人がつけることで、周囲に飛沫を飛ばさないようにできるので、症状のある人はぜひお願いします。風邪をひいていない人が「風邪をもらわないために」マスクをすべきかですが、そのことだけでの予防効果はあまり期待しない方がいいでしょう。あくまでも風邪の人にマスクをしてもらい、それ以外の人にはこまめな手洗いを推奨します。

なお、医療従事者は、風邪の患者さんの応対や頻繁にまた長時間面接することも多いため、業務上の推奨として常時マスクをしている事がありますのでご理解ください。同じような意味で、風邪症状のある家族の看病をする場合は、自身が風邪をひいていなくても念のためマスクをするのは良い事だと思われます。(3月9日時点での情報にもとづき執筆)

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