うちの子、おとなしくマスクをしてくれないんですけど…

感染症拡大を防ぐために多くの人がマスクを着用して出かけるようになりましたが、小さい子どもの場合、マスクを付けているのがむずかしいこともあるでしょう。今回は、子どものマスク着用をどう考えるか、というお話です。

長野中央病院 小児科医師 光武 鮎

2歳未満はマスクをしないでください

乳幼児は自分から「息が苦しい」「体調が悪い」と訴えることができず、自分でマスクを外すことも困難です。日本や米国の小児科学会などでは、乳幼児、特に2歳未満の子どものマスク着用は以下の危険性が高まるのでやめましょう、と注意しています。

・ 息が苦しくなり窒息の危険がある
・ 吐いた時に、吐物を飲み込んで窒息する危険がある
・ 熱がこもり熱中症の危険が高まる
・ 顔色や呼吸の状態の変化に保護者が気付くことができず、異変の発見が遅れる

子どもがマスクをつけるとき

一般的にはマスクは飛沫感染予防に有効です。しかし、「子どもも全員マスクをしよう!」ではなく、一人ひとりの発達段階や状況に応じて、マスク着用ができるのか、本当に必要かどうかを考えることが大切です。マスクの着用を安全にできるかどうかは、

・ 苦しくなった時や暑い時に自分で気づいて外せること
・ むやみにマスクや顔を触らないことができるかで判断すると良いです。

夏の野外などで熱中症の危険がある状況下ではマスク着用はむしろ危険です。マスクをしていると喉の渇きに気づきにくくなるので、夏の時期は普段からこまめな水分補給をして熱中症や脱水の予防をしましょう。
また、マスクが顔にあたる場所に接触性皮膚炎を起こす子どももいますので、密にならない場面ではマスクを外してください。

マスクによる接触感染にも注意

新型コロナウイルス感染経路は、飛沫だけではなく、ウイルスがついた手で口・鼻・目を触ることでも感染します。マスクが気になって顔をよく触るようになることで、接触感染のリスクが高まることにも注意が必要です。

接触感染予防には、こまめな手洗いが有効です。外から帰ってきたら、石鹸で手・手首・爪・指の間を20秒以上かけてこすり洗いし、最後にしっかりと拭いて乾かしてください。

アルコール消毒も効果がありますが、小さな子どもが飲み込んでしまわないように、6歳未満では大人が手伝ってあげてください。

最後に

新しい生活様式が推奨されて、学校や園での生活も大きく変わりました。しかし、各家庭の状況や子の発達段階はそれぞれであり、前述のように、その人に新しい生活様式を型どおり当てはめられるとは限りません。

子どもがマスクをきちんとしないからといって、保護者の方が思い悩む必要はありません。またマスクをしていない人がいても、頭ごなしに否定したりせず、さまざまな人がいる社会で続けられる感染対策は何かを一緒に考えていきませんか。

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