肺癌の手術について

長野中央病院・外科 医師 片桐 忍

年々増える肺癌

肺癌は日本で多くみられる癌の一つで、2017年度に肺癌と診された人数(罹患数といいます)は大腸癌、胃癌に次いで3番目に多い癌です。さらには219年度の癌死亡数では肺癌が全ての癌の中で最も多く、進行してしまうと治療が非常にむずかしい病気です。また肺癌の罹患数は年々増加しており、将来的にはより身近な病気になると予測されています。

肺癌の治療方法は医療技術の進歩により放射線治療、化学療法、免疫療法といったさまざまな治療法が選択肢として増えましたが、それでも転移のない肺癌については、手術による切除が現在でも基本となっています。

負担の少ない胸腔鏡手術も可能に

従来の肺癌の手術は脇から背中にかけて大きく切開し筋肉や肋骨を切断する開胸手術が基本であったため、身体への負担が大きく術後の痛みや体力の低下により入院期間が長くなりがちでした。

しかし最近は手術器具や技術の進歩も目覚しく、早期の肺癌であれば手術用のカメラを用いた「胸腔鏡手術」により小さな傷で肺癌の手術を行うことができるようになりました。

当院では、脇に1~3㎝の小さな傷を3か所作って胸腔鏡手術を行っています。肋骨は切断せず筋肉の損傷も最小限で済むため、開胸手術に比べて身体への負担は少なく、術後の痛みや体力の低下も少なく済むため、術後は順調なら3~5日程度で退院が可能です。

低線量胸部CTで早期発見を

胸腔鏡手術が行えるのは現段階では「早期」の肺癌に限られます。肺癌検診は主に胸部レントゲン写真で行われていますが、正直なところ胸部レントゲン写真だけでは早期の肺癌を発見するのはむずかしいです。そのため近年では、「低線量胸部CT」という被ばく量の少ないCT検査で早期の肺癌を発見する取り組みが全国的に広がっており、当院の人間ドックでもオプションとして選択できるようになりました。

喫煙は肺癌の重大なリスクとなっているため、喫煙歴のある方にはぜひ低線量胸部CTを受けていただきたいのはもちろんですが、近年では喫煙歴のない方の肺癌の症例も増えてきているため、喫煙歴のない方でも低線量胸部CTを受けていただくことをお勧めします。

低線量胸部CTで早期のうちに肺癌を発見し、身体への負担が少ない胸腔鏡手術で治療をしましょう。

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