便潜血検査のすすめ

長野中央病院 健康管理科 科長 芝野 牧子

罹患数1位の大腸がん

2人に1人ががんになると言われる現代、がんで亡くなる人の数も増えています。大腸がんはすべてのがんのうち罹患数(2019年)が1位、死亡数(2021年)は男性が2位、女性が1位と、日本人にとって、とても注意が必要ながんです。
しかし、早い段階で見つかれば高い確率で治すことができるがんであり、早期に発見し治療するため定期的な検診を受けることが重要です。

便潜血検査で早期発見

大腸がん検診である便潜血検査は、がんやポリープからの出血があるとき便の中に混ざってくる微量な血液を検出する方法です。出血がない場合は見つけられない可能性もありますが、大腸がんによる死亡率を減少させる効果があるとして推奨されています。
長野中央病院では、人ヘモグロビンに対する抗体を利用した免疫法を用いており、肉や魚の血液を食べても反応しません。また口の中や食道からの出血は胃酸で血液のヘモグロビンが変性するため陽性になりませんが、痔などの出血では陽性になる場合があります。

正しい結果を出すポイント

正しい結果が出るようにするためには、便の採取や保存方法に注意することが大切です。

ポイント1
便のいろいろな所をこすりましょう。目に見えないほんの少しの血液は便の中に均一には混じっていないので、表面をまんべんなくこすりましょう。(図参照)

ポイント2
2日間(2本)の便を採取しましょう。1日だけよりも2日間行うことで精度がより高くなります。別の日の便のほうが望ましいですが、別の便であれば同じ日に採取したものでもかまいません。

ポイント3
とる量は採取棒のみぞに埋まるくらいにしましょう。大腸の中では正常な人もごくわずかな血液が出てくることがあるため、便を多くとりすぎると正しい結果が出ないことがあります。この検査に多くの便は必要ありません。

ポイント4
便をとった容器は低温で保存しましょう。便の中の血液は高い温度におくことや時間がたつほど減少するため、できるだけ冷蔵庫で保存し早めに提出しましょう。

出典:栄研化学株式会社資料

「陽性」の場合は必ず精密検査を

便潜血検査は食事制限がなく、自宅で少量の便をとるだけの手軽に受けられる検査です。毎年、定期的に受けましょう。そして「陽性」や「要精密検査」の結果を受け取ったら、必ず精密検査を受けましょう。検査結果が陽性でも、大腸がんが確定したわけではありません。出血の原因を知るためにも大腸カメラ検査などの精密検査を必ず受診しましょう。

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