肺炎予防にワクチン接種を
2011年09月01日
肺炎とは、主に細菌やウイルスが肺に感染して炎症を起こす病気です。抗菌約治療や抗ウイルス薬治療が発達した今日でも、肺炎は日本人の死亡原因の第4位を占め、ここ十数年間は増加傾向にあります。 65歳以上の市中肺炎(日常生活を送っている人が、病院、診療所の外で感染し発病する肺炎)の原因菌として、最も多いのが肺炎球菌です。また、毎年冬に流行するインフルエンザに罹った高齢者の1/4が細菌性肺炎になるとも言われています。現在、肺炎球菌の感染を予防するワクチンやインフルエンザワクチンがあり、ワクチンにより肺炎を予防するという考え方は非常に理にかなっています。 そこで今回は、肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンについての有効性などを紹介します。
長野中央病院 内科医師 近藤 知雄
肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス)
肺炎球菌には約90種類の型がありますが、肺炎球菌ワクチン接種によりそのうちの23種類(約80%をカバー)に対して免疫をつけることができます。
いくつかの研究では、肺炎球菌ワクチン接種をした場合、市中肺炎の入院中の死亡を50%減少させ、呼吸不全(呼吸状態が非常に悪くなること)を33%減少させたなど「重症化を阻止する効果」が報告されております。肺炎球菌ワクチン接種が推奨される対象者を(表)に示します。
肺炎球菌ワクチン接種を必要とする対象者 1. 65歳以上の高齢者すべて 2. 64歳以下で次の慢性疾患やリスクを有する人
慢性心不全、慢性呼吸器疾患、糖尿病、アルコール中毒、慢性肝疾患、髄液漏、長期療養施設居住者3. 易感染性の方
摘脾を受けた人、HIV感染者、全身性の悪性腫瘍、慢性腎不全、ネフローゼ症候群、臓器移植後、先天性免疫不全、免疫抑制療法中(ステロイドなど)
肺炎球菌ワクチンは、肺炎球菌以外の微生物による肺炎の予防効果はありませんので、「肺炎球菌ワクチン接種をすれば、すべての肺炎を予防できる」というわけではありません。しかし、先ほども述べましたように、肺炎球菌による肺炎は65歳以上の高齢者において非常に頻度が高く、しかも重症化しやすいため、肺炎球菌ワクチン接種による予防は非常に重要と考えられます。
インフルエンザワクチン
先ほども述べましたが、普通の風邪から肺炎を合併することは稀ですが、インフルエンザに罹った後に肺炎を併発する頻度は高齢者で1/4といわれています。そのため、インフルエンザワクチン接種によりインフルエンザを予防することが、結果的に肺炎の予防にもつながります。
インフルエンザワクチン接種をしたからといって絶対にインフルエンザを阻止できるわけではありませんが、70~90%の予防効果があります。仮に予防接種をしたのにインフルエンザに罹ってしまった場合でも予防接種をしていない人と比べると症状が重くならないといわれているため、接種しておいた方がいいでしょう。
おわりに
65歳以上の高齢者ではインフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンを併用することで肺炎での入院を30%近く減少させる報告もあり、両方のワクチンにより肺炎予防が期待できます。ワクチン接種についてかかりつけ医に相談してみましょう。