関節リウマチの治療
2010年11月01日
長野中央病院 整形外科 医師 下田 信
大きく変化した関節リウマチの治療
近年関節リウマチの治療が大きく変わりました。
以前は有効な薬も少なく、関節破壊によって著しく患者さんの生活の質を低下させていた関節リウマチですが、抗リウマチ薬によって症状を改善させ、関節破壊の進行を遅らせることが可能になってきました。さらに早期から強力な治療を行うことによって、寛解(※1)に至らせることも報告されています。私が治療に携わるようになった20年程前は、関節リウマチは治らないと思われており、その頃と比べると劇的な進歩です。
治療が進歩した要因のひとつは、関節リウマチの病因について分子生物学的レベルで究明が進んだことです。自己免疫疾患(※2)であることがはっきりしてきました。もう一つは有効な治療薬が出現したことです。
※1病気の徴候が減少すること
※2免疫反応が自己の構成部分に対して起こり、発生する疾患
早期診断治療の重要性
関節リウマチは慢性的に経過し、徐々に関節が変形し、破壊されていくと考えられていました。近年の研究では、発症から2年で関節は破壊されてしまうことが分かってきました。そのため関節リウマチを早期に診断し、早期から強力な治療を行うことが薦められています。
関節リウマチは四肢の関節が炎症を来たし、疼痛や腫脹を伴う疾患ですが、診断は必ずしも容易ではありません。血液検査でリウマチ因子が陽性であるから関節リウマチだと思ってしまう患者さんもられますが、リウマチ因子だけでは診断されません。関節痛でリウマチが心配な方は医師の診断を受けることが大切です。
抗リウマチ薬
関節リウマチと診断されたら抗リウマチ薬による治療が開始されます。
抗リウマチ薬は何種類かありますが、特徴として(1)効果発現まで時間がかかること、(2)副作用があること、(3)抗リウマチ薬に反応しない患者さんもいることなどがあります。
問題になるのは副作用で、適切な治療がなされないと死に至る重篤なものもあります。そのため抗リウマチ薬が開始される前の検査と、治療中の定期的な検査が必要になります。また発熱、咳、全身倦怠感、食欲不振など抗リウマチ薬の副作用が疑われる場合はすぐに受診して検査を受け、必要な治療を受けることが副作用を重症化させないために必要なことです。
生物学的製剤
抗リウマチ薬を何種類か使用しても症状を抑えられない場合があります。その場合は生物学的製剤を考慮します。
関節リウマチは異常な免疫反応によって関節滑膜が異常増殖し、炎症性サイトカイン(※3)が過剰に産生されます。炎症性サイトカインを抑える薬剤が生物学的製剤です。劇的な治療効果をもたらす反面、サイトカイン本来の作用も抑えてしまうため、重篤な副作用も報告されています。加えて薬剤が非常に高価なため、治療費が大きな負担となります。適応や治療においては専門的な判断が必要で、できれば関節リウマチ専門医での治療が望ましいと思います。
※3種々の細胞から分泌される低分子蛋白で、免疫反応の強さを調節する
手術療法
一度破壊されてしまった関節は、残念ながら修復されず、機能を低下させてしまいます。日常生活に支障をきたす程の関節障害は手術治療が選択されます。人工関節形成術や変形矯正・固定術など、機能を改善させる手術がありますので、整形外科医に相談してください。