糖尿病と上手に付き合い長生きを

長野中央病院・ 内科 医師 望月 峻成

最高齢は98歳の女性

私は糖尿病専門外来で、多くの患者さんの治療にたずさわってきました。そのなかには、90歳以上の超高齢者の方々もいます。糖尿病がなくとも、90歳以上になって元気に生活することは大変です。その上、通院までされているのは、糖尿病と上手に付き合い長生きされている方々といえます。「糖尿病があっても元気で長生き」を可能にしている条件を、患者さんのカルテから考えてみたいと思います。

全員がⅡ型糖尿病

表1は、09年11月現在で長野中央病院糖尿病外来に通院されている超高齢者12名の一覧です。女性10名、男性2名で、最高齢は98歳です。全員がⅡ型糖尿病です。

糖尿病には、血糖を下げる効果をもつホルモンであるインスリンが、すい臓のβ―細胞の破壊によりつくられなくなっておこるⅠ型と、過食や運動不足などで、やや太り気味の方に多い、インスリン抵抗性の増加とインスリンの分泌不足によっておきるⅡ型があります。日本人の患者のうち約95%がⅡ型です。

糖尿病といわれてからの治療期間(罹病期間)は平均28・8年、最近の体重は平均44・7kg、肥満の評価法のBMIは平均21・6kg/㎡、糖尿病の指標となるHbA1cは平均6・7%でした。現在の治療法はインスリン5名、経口剤6名、食事療法のみは1名で、インスリン治療者の割合が高くなっていました。

表1 超高齢糖尿病患者一覧

糖尿病合併症の有無

表2は、眼・腎臓・動脈硬化性合併症についてみたものです。

高血圧症では、8名が降圧剤を内服していますが、12名の来院時血圧は、平均138~70mmHgと良い値でした。脂質異常者は内服しているのは1名のみで、総コレストロールは平均204mg/dl、HDL平均65mg/dl、中性脂肪は平均103mg/dlで、すべて正常の範囲内でした。また、乳がん、胃がんを克服した方が2名いました。動脈硬化はすべての人でみられました。

表2 糖尿病合併症一覧(人)

元気で長生きの条件

超高齢者のカルテから明らかになったことは、
①糖尿病Ⅱ型であってもインスリン療法を行っている人の割合が高い。
 HbA1cは平均6・7%、高くても7.6%であった。
②肥満者が見られない。
③腎症の合併が軽い。
④血圧がよくコントロールされ、脂質異常が見られない。
⑤がんを克服されている人もみられた。

以上により糖尿病と上手に付き合い、長生きするためのヒントは、
1.必要ならインスリンを使ってHbA1cを7%以下にする。(表3参照)
2.肥満していたら、食事療法でBMIを25以下にする。(表4参照)
3.血圧、脂質異常に注意し良い値にする。
4.がんは早期発見に努めること、となりました。

超高齢者の方々のいっそうの長寿を祈念して、レポートをおわります。

表3 糖尿病の指標
表4 BMIによる肥満の評価

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