合併症がこわい糖尿病

6月から長野市の特定健診が始まりました(昨年までは市民健診)。この健診は糖尿病などの生活習慣病の審査を目的としています。日本で糖尿病が強く疑われるのは、約820万人、可能性が否定できない人を合わせると約1870万人と激増しています。 糖尿病ないし糖尿病が疑われる人はきちんと医療機関で治療をうけるべきですが、現状は半数以下にとどまっていると推定されます。(糖尿病の指標は表1参照)

長野中央病院 内科(糖尿病・内分泌・腎臓内科) 医師 近藤 照貴

糖尿病は初期治療が重要

糖尿病を適切に評価して治療する意義は、糖尿病の合併症を予防することにあります。

年間で糖尿病による死亡は約1万2000人、糖尿病性網膜症による高度視力障害は約3000人、糖尿病性壊疽による下肢切断は約3000人、糖尿病性腎症による腎不全で透析導入となる人は約1万4000人です。糖尿病は高度の身体障害や死亡につながる疾患です。

糖尿病の治療は早期に診断し、初期の段階で病態をよく理解し、食事・運動・糖尿病に関する日常生活の指導をうけ、糖尿病に関連した合併症の精密な評価を行ったうえで、継続的に治療を行うことが重要です。

働く人に好評の「1泊教育入院」「メタボ入院」

糖尿病と診断されたら、精密検査、指導・治療が必要なことはわかるが、入院している時間はない、という患者さんの声をよく耳にします。

表2は、長野中央病院の「1泊教育入院」のメニューですが、これまでは1~2週間程度の入院が必要な内容です。しかし、現実には働き盛りで、治療が必要な人ほど長期の休業がむずかしく、教育・検査の機会がとれないことがたびたびありました。

長野中央病院では、05年度から初期の「1泊教育入院」を開始し、この間、180人の教育指導を行ってきました。

この間の経験から、重症例や合併症の治療目的でなければ、初診症例の多くは外来で血糖コントロール可能であり、初期の検査・教育は1泊入院でもできるということです。

血糖コントロールは、1泊入院でも入院時平均HbA1c8・6%から6・9%、1年後には6・6%というように改善しています。この結果は、08年の日本糖尿病学会総会で発表しました。

また、主として肥満により糖尿病が改善しない人のために、グラフ化体重日記やライフコーダーを用いた身体活動量評価に基づいて行動変容をうながす行動療法を取り入れた、約1週間の「メタボ入院」にも取り組んでいます。

おわりに

特定健診などで糖尿病や糖尿病が強く疑われると指摘されても、「病院に行くと長い入院が必要と言われるのでは…」と懸念して、つい受診の機会を逃すことがあると思われます。私たちは、患者さんのおかれた状況に配慮し、効果的で効率的な検査・指導を追求してきました。糖尿病は初期の評価と治療がきわめて重要な病気です。心あたりの方はぜひご相談ください。

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