そけいヘルニアの治療

長野中央病院 外科医師 成田 淳

そけいヘルニアとは

立っている時にどちらかの足のつけねにピンポン玉のようなふくらみが出ることがありませんか。お腹と足の境界(そけい部)に腸などが飛び出し気味になる疾患。これが“そけいヘルニア”です。俗にいう“脱腸”です。

通常強い痛みはありませんが、長時間の立ち仕事などを行ったあとは重たいような鈍い痛みを感じる方が多いようです。横になって休むことで腹圧が強くかからなくなり、飛び出したふくらみは元通り引っ込みます。

しかし、時にはヘルニアの孔に腸が完全にはまり込んでしまう場合があります。ヘルニアの“かんとん”です。この場合は早急な整復か緊急手術が必要です。はまり込んだ腸管は血が通わなくなり壊死してしまうので大変危険な事態に陥ってしまいます。

そけい部は筋肉の層が幾重にも重なって構成されていますが、元来隙間が存在します。加齢とともに筋膜が弱くなり、強い腹圧に耐えきれずヘルニアが発症するようです。40代以上の男性に多いゆえんです。

治療は最新のメッシュ法で

治療は手術療法です。以前は筋膜を頑丈に縫い合わせて孔をふさいでいましたが、手術後の痛みやツッパリ感が強く、また、再発も時にみられました。

現在は、筋膜の隙間の弱くなった部分に薄い人工の網目状のシートを挿入し、腹圧に耐えられる壁を作る手術方法が主流です。テンションフリー法と総称される方法です。脊椎麻酔という下半身の痛みをとる麻酔をかけ、お話ししながら行う30分ほどの手術です。また、時には膨潤麻酔という局所麻酔で行うことも可能です。当院はいち早くこの痛みとツッパリ感の少ないメッシュ挿入法を取り入れ、多くの方に手術を施行させていただいております。

そけいヘルニアにもさまざまな種類と個人差があります。ダイレクトクーゲル法を中心に、クーゲル法、メッシュプラグ法など、患者様の病状に対応した手術方法を選択しております。

電子カルテ版クリティカルパスを駆使し、よりわかりやすい診療を展開

手術当日の午前中に入院いただき、午後手術を施行します。手術の後は4時間の安静ののち飲水や歩行を始めていただきます。翌日からは食事を普通におとりいただきシャワー浴も可能です。創部の抜糸もないため、手術後3日ほどで退院される方が多いようです。

当院は全国的にも先端をいく電子カルテ版クリティカルパスを使用し、わかりやすい快適な標準医療を展開しております。患者様にそけいヘルニアの診療をできるだけおわかりいただき、ご一緒にそけいヘルニアの解決を図りたいと考えます。

より活動的な生活のために

人間は立って歩き社会生活を営むもの。ふくらみを気にしながら生活するのは大変です。元気にいきいきと生活をしていただくためにも治療が必要です。当院の外科は積極的にそけいヘルニアの手術に取り組んでいます。長野市のヘルニアセンターを目指します。

そけいヘルニアでお困りの方、そけいヘルニアであるか心配な方、ぜひ一度、当院外科にご相談ください。

クリティカルパスとは

疾病ごとに入院から退院までの医療計画を明確にしたもの。患者様は検査や治療内容、リハビリ計画、退院の目安などが納得でき、医療者は、もれ・間違い・むだのない治療を行う事で、より質の高い医療が提供できます。

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