障害者のためのリハビリの工夫

長野中央病院 リハビリテーション科医師 中野 友貴

リハビリ科生まれの手すり、全国へ

長野中央病院のリハビリテーション科が始まったのが1980年。もう27年目になります。この間にリハ科の仕事で、リハビリの様子を変えたものをあげると、まず第一にベッドに付ける手すりをあげなくてはなりません。

ベッドに付ける移乗用手すりは、当院リハビリ科のオーダーメードの移乗用手すりが使われています。その実用性を確かめて、長野県民主医療機関連合会の「長野県事業協同組合」が全国に販売するようになってもう何年もたっています。

この6月、「スーパーらくらく手すり」をモデルチェンジし、介護保険でレンタル可能な道具として配給することにしました。

「らくらく手すり」誕生

「らくらく手すり」には歴史があります。今から20年以上前のことです。

今と変わらず、リハビリ病棟での看護師の仕事は、その多くの部分が排泄の介助でした。何とかしてポータブルトイレに自分で移れるようにならないか、日々工夫の毎日でした。

ベッドの向かい側の壁に手すりを付け、その手すりを持つとポータブルトイレへの移乗が楽になると考え、病棟の何カ所かに付けました。確かに楽になるのですが、すべてのベッドに使えるように手すりをセットできませんし、お金もかかります。

考えていたところ、看護協会を通じて看護師さんが「移乗用手すり」(タヒラ製)を見つけてきて購入しました。これは手すりをベッドに付ける方式で、どのベッドにも付けられます。これがあると、患者さんのポータブルトイレへの移乗がとても楽になりました。しかし、高価な上に、他のベッドへの付け替えにとても手間がかかります。

もっと安くて楽なのはないかということで考え出されたのが「らくらく手すり」です。ベッド柵の穴に差し込む型の、90度に張り出した移乗用手すりですが、ほとんどの脳卒中患者さんに付けると効果があることがわかりました。

モデルチェンジで90度に張り出した手すりと前につける手すりを一体化させ安定感が増しました。

「スーパーらくらく手すり」を商品化

しばらくして、小脳性の運動失調があるために、らくらく手すりを片手で持つだけでは立っていられない患者さんがいました。

ある回診の時、らくらく手すりをもう一つ持ってきて、らくらく手すりにさらに前手すりを付けた格好にしてそれをもう一方の手で持ってもらいました。すぐに患者さんは移乗動作が自立しました。これはすばらしいということで「スーパーらくらく」と名付け、商品化し利用するようになりました。

今では5階病棟の患者さんの35%がらくらくを、60%がスーパーを付けるようになっています。移乗動作が自立するだけでなく転びにくい環境をつくれることがわかりました。全国的にも使ってくれる院所が増えてきていますが、当院ほどたくさんは使っていません。

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今回のモデルチェンジで「スーパーらくらく手すり」は、より安定感が増し、取り付けも簡単になりました。家庭でも、全国の病院や施設でも多く使ってほしいと思っています。

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