心臓リハビリテーションの効果

長野中央病院 循環器内科 医師 板本智恵子

心臓リハビリテーションとは

心臓リハビリテーション(以下心臓リハビリ)とは、自分の病気のことを知ることから始まり、患者さんごとの運動指導、安全管理、危険因子管理、心のケアなどを総合的に行うものです。当院には3階に心臓リハビリテーション室があります。

1990年代まで心臓病には絶対安静が基本でした。しかしベッドから離れない生活を送っていると、次第にすべての筋肉が衰え、運動能力も下がって、寝たきりやそれにともなううつ病などを発症してしまうケースも珍しくありませんでした。現在では、適切な強さの運動であれば危険が少なく、かつ運動することで体力を維持したり改善したりできることがわかっています。

心臓リハビリには、以下のような効果があります。運動能力が増加することによって、楽に動けるようになる、気持ちよい汗をかくことによって、不安やうつから解放される、狭心症や心不全の症状が軽くなる、生活習慣病の危険因子(血圧、血糖値など)がよくなる、血圧や脈拍が安定し不整脈が起きにくくなる、血栓ができにくくなる、心筋梗塞の再発や突然死が減る、心不全の死亡率や再入院率が減少するなどです。

心臓リハビリと運動

心臓リハビリで行う運動は、ウォーキング、自転車こぎ、軽いエアロビクスなど全身のリズミカルな運動で、会話をしながらもできるような運動です。重量挙げや腕立て伏せなど、いきんだり、急に強い運動をするのは心臓に悪影響を与える恐れがあります。

運動は強すぎると心臓に悪影響があり、弱すぎると効果がありません。適切な運動の強さは人によって異なるため、患者さん一人ひとりの状態に合わせた運動の強さを設定します。

その運動の強さを決める方法の1つに心肺運動負荷試験というものがあります。これは心電図、血圧、呼吸中の酸素と二酸化炭素の濃度を計測しながら運動をし、体力評価をして適切な運動強度を決めるものです。

専門家と二人三脚で

当院には心臓リハビリテーション指導士が在籍しており、心大血管疾患リハビリテーション料(Ⅰ)の施設基準を取得しています。おもに急性心筋梗塞、狭心症、弁膜症などの手術後の患者さんや心不全で入院した患者さんに、急性期から心臓リハビリを行っています。希望があれば外来でも継続は可能です。

また、外来の患者さんで、心臓の病気のある方、糖尿病や高血圧などの患者さんで運動することにより心臓発作が出ないか心配な方にぜひおすすめします。外来担当医師に相談をしてください。

心臓リハビリは運動療法のみではありません。運動をしても食事療法ができていなかったり、喫煙をすれば効果が半減してしまいます。当院では医師、理学療法士、看護師、栄養士など多くの専門医療職がかかわって、患者さん一人ひとりの状態に応じたリハビリプログラムを提案しサポートしています。

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