COPDについて
2014年09月01日
長野中央病院 内科 医師 近藤 知雄
COPDとは
皆さんCOPDをご存じでしょうか。よくテレビコマーシャルで流れていたため知っている方も多いのではないでしょうか。COPD(chronic obstructive pulmonary disease:慢性閉塞性肺疾患)とは、以前は慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称です。主にタバコを長期的に吸うことで空気の通り道である気道や酸素交換を行う肺胞に炎症が起こる病気で、喫煙習慣のある中高年に発症する病気です。
日本人の40歳以上の人口で8.6%、約530万人の患者(2:1 男:女)が存在すると推定されています。これは、かなり頻度の高い病気と言えます。しかし、ほとんどの人が診断されておらず未治療の状態であると考えられています。
タバコの煙により肺に炎症が起こると、気道がどんどん狭くなり、息を吸ったり吐いたりしづらくなる、空気を吸っても酸素を血液中に取り込めなくなり息が苦しくなる等の症状がでます。
COPDの症状
・労作時の息切れ ・慢性の咳 ・慢性の喀痰 ・喘鳴(ぜーぜーという呼吸音)
・COPDが進行した人では体重減少 ・食欲不振
※慢性とは月~年単位のことを言います
COPDを疑い診断するには
長期の喫煙歴があり慢性に咳、痰、労作時呼吸困難があればCOPDが疑われます。COPDを疑って、最初に行う検査は、スパイロメトリーという呼吸機能検査です。先ほども述べましたが、タバコの煙によって気道に炎症が生じると気道が狭くなり、1秒間に息を吐き出せる量(1秒量)が健常者よりも少なくなります。1秒率(1秒量/肺活量)が70%未満になると閉塞性障害といい、さらに胸部レントゲン(場合によって胸部CT)などの検査を行って、閉塞性障害を来すその他の疾患を除外できればCOPDと診断されます。
併存症について
また、COPDは多くが中高年に発症するため、喫煙や加齢に伴う併存症が多くみられます。併存症は、重症度や生活の質に影響することから、併存症も含めた包括的な重症度の評価と管理を行う必要があります。
COPDの併存症
・全身性炎症 ・栄養障害 ・骨格筋機能障害 ・心・血管疾患(心筋梗塞、狭心症、脳血管障害)
・骨粗鬆症(脊椎圧迫骨折) ・抑うつ ・糖尿病 ・睡眠障害 ・緑内障 ・貧血
COPDの治療
まずは、タバコの煙が原因であるため禁煙が治療の基本となります。薬物治療としては、気管支拡張剤が推奨されています。薬物治療を行っても、酸素状態が悪い場合は在宅酸素療法が必要になります。また、COPDの経過中に、息切れの増加、咳や痰の増加、胸部不快感・違和感などが出現することがあります(これを増悪期といいます)。増悪の原因として、多いのは呼吸器感染症と大気汚染ですので、増悪のリスクを減らすためにもインフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンは推奨されています。
最後になりますが、タバコの煙によって壊れてしまった気道や肺は元通りにはなりません。また、喫煙を続けると呼吸機能の悪化が加速してしまいますので、予防・治療には禁煙が非常に大事です。禁煙に困った時には、一定条件を満たせば禁煙治療も保険適応の対象となるため、お気軽にご相談ください。