熱中症にご用心!

長野中央病院・救急部 副部長 三浦 英男

世界初の熱中症ガイドライン整う

読者のみなさん、暑中お見舞い申し上げます。

今年も暑い夏がやってきました。当院の救急部も若い医師たちを中心に、連日救急車搬入の患者さんの救命・治療に奮闘しています。今年も5月頃から熱中症の患者さんが当院にも搬入されてきています。

昨年、「信濃毎日新聞」に熱中症の記事を掲載してもらいましたが、今年の4月13日に日本救急医学会により、これまで実施された調査結果や国内外から寄せられた報告に基づいて、世界初の熱中症ガイドライン2015(指針)が出されましたので、その内容を中心にお知らせしたいと思います。

病名を統一し、3段階に分類

熱中症ガイドラインによると、2013年の6~9月の4か月間に、全国で医療機関を受診し熱中症関連の診断を受けた症例は、40万7948人と報告されています。1日当たり約3300人が医療機関を受診している計算になります。

これまでは熱疲労、熱けいれん、日射病など、症状によってさまざまな病名がつけられていましたが、客観的な重症度が反映されていませんでした。周囲にいる人がいち早く異変に気づいて適切な治療につなげられるよう、今回のガイドラインでは熱中症という病名に統一し、重症度を1度~3度の3段階に分けたうえで、それぞれの症状や適切な対応などが具体的にまとめられています。

重症度と対処法

今回はその熱中症の重症度の分類と対処法について具体的に述べます。

【重症度1度】
体温などにかかわらずめまいや立ちくらみ、大量発汗などがある状態。発汗があった場合、その蒸発の際に体表の体温がさがっています。体温計の指標で体温が高くなくても中枢体温は上昇し、熱中症になっている可能性があります。
この場合の対処法は涼しいところへ移動し、まず体の表面を冷やし、特にわきや後頭部、足の付け根に冷水や氷をあて冷却すること、水分や塩分の補給を行うなどの応急手当てを施し状態を見守ることが原則です。
これらの手当てを行っても症状が回復しない場合は、医療機関の受診が必要です。

【重症度2度】
1度の症状に加えて、頭痛や嘔吐、倦怠感などの症状がみられる状態です。この場合は迷わず医療機関へ搬送し、経口や点滴による水分と塩分の補給、体を冷やす処置などを受ける必要があります。

【重症度3度】
さらに呼びかけに反応が悪いといった意識障害やけいれんなどの症状がみられる場合は、入院加療が必要な危険な状態ですので、すぐに救急車で病院へ搬送をお願いします。

先月、自宅の部屋に大きなゴキブリが出て撃退しましたが、温暖化の波が信州にも着実にきているようです。信州の夏は寒暖の差が激しく、特に高齢の方は発汗能力が落ちていますので熱中症になりやすいので、ご家族も衣服の調節や水分補給に心がけてください。皆様が健やかに夏を無事過ごされますことを祈念いたします。

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