急性虫垂炎について
2016年11月01日
急性虫垂炎は一般的に「盲腸」という名前で広く知られており、緊急手術が行われる最も代表的な疾患です。子どもから年配者まで幅広い年齢層でみられ、当院でも週に1~2例くらいの頻度で診断し治療しています。
長野中央病院 医師 片桐 忍
虫垂とは?
正確には「虫垂」と「盲腸」は別物です。大腸の入り口部分を「盲腸」といい、この盲腸から伸びている長さ5~6㎝、太さ5~6㎜ほどの細いヒモを「虫垂」といいます。
虫垂は腸内に免疫細胞を供給し、腸内細菌のバランスを整える働きがあるといわれています。しかし手術により切除してもその後の生活に支障をきたすことはほとんどありません。この虫垂に何らかの原因で大腸菌が侵入し炎症を起こすと虫垂炎となります。
急性虫垂炎の症状
ほとんどの人で右下腹部の痛みがあります。発熱もよくみられますが、炎症が軽度の場合は平熱のこともあります。右下腹部痛が出現する前に胃の痛みや吐き気が先にみられますが、軽度の胃炎と症状が似ており、この時点で虫垂炎と診断するのは困難です。
重症の虫垂炎になると腹部全体へと痛みが広がり38℃以上の高熱がみられますが、ここまで進行すると長期入院による集中治療が必要となります。
早期治療のため、胃炎症状から右下腹部痛に変化する症状がみられたら早めに病院を受診してください。
急性虫垂炎の治療
一昔前までは虫垂炎が疑われた時点で診断と治療を兼ねた緊急開腹手術が第一に選択されていましたが、CT画像などの診断技術が進歩した現在ではほぼ正確に虫垂炎を診断することができ、炎症の程度によって治療方針が決定されるようになりました。
症状や炎症が軽度の場合は抗生剤の点滴による保存的治療のみで治療できる場合があります。
炎症が強い場合は緊急手術となりますが、現在は腹腔鏡手術による治療を行います。腹腔鏡手術では臍と下腹部に3~4か所小さな穴を開けるのみで治療できるため、従来の開腹手術に比べ体への負担や痛みが少なく、早期退院も可能となります。