結核は過去の病気ではありません

長野中央病院・内科 医師  近藤 大地

結核とはなにか

結核には肺結核、気管支結核、腎結核、結核性脊椎炎など、種類があることはご存知でしたか? ここでは主に肺結核についてお話しします。

まず知っていただきたいことは、感染と発病は違う、ということです。

感染とは、簡単にいうと結核の菌が体内に入ることで成立します。いったん感染すると生涯、結核の菌は体内に存在し続けます。

一方、発病とは結核の菌が体内にいる状態(感染している状態)、かつ免疫が低下した状態で、結核の菌を抑えつけられなくなると症状が出現することです。つまり感染しているだけでは症状はありません。

結核とは昔の病気であると思っていませんでしょうか? 日本で結核を新規に発症(=発病)する人は毎年約3万人と言われています。昔は結核に感染しているのが当たり前でした。その人が高齢になり免疫能が低下したり、免疫を抑える薬を使用すると結核の菌が活性化し発病します。結核を過去の病気と侮ることはできません。

結核の診療

一概に言えませんが、結核は「咳が止まらず長引いている」や「なんだかずっとだるい」、といった症状で受診されることが多いです。そういう方には、周りに結核の人がいなかったかどうか、以前結核になったことがないか問診します。そして胸のX線検査(CT検査も含む)をします。

結核を診断する最も良い方法は、痰の中に結核の菌がいるかどうかを確認することです。痰の中に結核の菌がいたら肺結核の診断となります。この場合、人にうつす可能性が高いので、入院して個室に入っていただくことが多いです。

結核の治療は、薬剤を複数使用して行います。治療期間は長期にわたり、6~9か月かかります。ずっと個室にいる必要はなく、痰の中に結核の菌がいなくなれば一般的な病室へ移ったり、退院も考慮されます。

最後に

結核の診断は困難なことが多いです。典型的な症状や画像所見がほとんどなく、診断までに日数を要する場合があります。特に高齢の方で、咳が長引いていると感じたら受診を考えてみてください。

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