熱中症にご注意を!

今年5月、大学の運動部で熱中症の事故が起きてしまいました。今回は、熱中症の予防や、かかった時のポイントについてお伝えします。

長野中央病院 内科 医師 林 充那登

昨年度の発生状況

全国では4万7877人が熱中症で救急搬送されていて、うち80人が亡くなっています。長野県では638人( 人口10万人あたり32.4人) でした。傾向としては年々減少傾向になっています。

年齢別では高齢者が56.3%と最多で、成人(33.3%)、少年(9.6%)と続きます。高齢者の割合が徐々にふえています。特に高齢者では日常生活の中で発症して徐々に進行し、周囲の人に気付かれにくいといわれており、対応が遅れやすく重症化しやすいです。

発生場所は屋内と屋外がほぼ半々であり、屋内であっても救急車を必要とする熱中症が起きてしまうことに注意が必要です。

熱中症の起こりやすい状況

熱中症というと暑い日の屋外というイメージですが、単純な気温のみでなく湿度や風速なども影響します。リスクの指標としては暑さ指数(WBGT)が提唱されています。全国各地の危険度は、環境省の『熱中症予防情報サイト』でチェックできます。

暑さ指数による日常生活での熱中症予防の目安は表のとおりです。

<figure class="wp-block-flexible-table-block-table"><table class=""><tbody><tr><th style="background-color:var(--color_pale02); min-width: 100px;">WBGTによる<br>温度基準域</th><th style="background-color:var(--color_pale02)">注意すべき<br>生活活動の目安</th><th style="background-color:var(--color_pale02)">注意事項</th></tr><tr><td style="background-color:var(--color_deep01);color:#fff">危険<br>31℃以上</td><td>すべての生活活動で<br>おこる危険性</td><td>高齢者においては安静状態でも発生する危険性が大きい。外出はなるべく避け,涼しい室内に移動する。</td></tr><tr><td style="background-color:var(--color_deep04)">厳重警戒<br>28℃以上 31℃未満</td><td>外出時は炎天下を避け,室内では室温の上昇に注意する。</td><td></td></tr><tr><td style="background-color:var(--color_pale04)">警戒<br>25℃以上 28℃未満</td><td>中等度以上の生活活動でおこる危険性</td><td>運動や激しい作業をする際は定期的に充分に休息を取り入れる。</td></tr><tr><td>注意<br>25℃未満</td><td>強い生活活動で<br>おこる危険性</td><td>一般に危険性は少ないが激しい運動や重労働時には発生する危険性がある。</td></tr></tbody></table></figure>
<p>(日本生気象学会「日常生活における熱中症予防指針」Ver.3.1 より)</p>

症状と対処

熱中症は、高温の環境に適応できずに起きる体調不良です。症状は多彩であり、暑い場所にいるときや、その後の体調不良はすべて熱中症を疑います。

軽症ではめまいや立ちくらみ、生あくび、大量の発汗、筋肉痛やこむら返りなどが起こります。ここまでは現場で対応できることが多く、涼しい場所に移動して水分摂取と休息を行うようにします。可能であれば首や手足の付け根を氷嚢などで冷やすとよいです。

中等症では頭痛、嘔吐、集中力や判断力の低下などが見られるようになり、医療機関への受診が必要です

意識障害が出現する場合には入院が必要な場合もあり、特に受け答えができない場合には直ちに救急車を呼びましょう。

予防方法

起こりやすい状況を避けるのが一番ですが、やむを得ず外出しなければいけない場合には日傘や帽子などを使って日差しを避けるようにしましょう。可能な限り日陰を歩くことも大切です。また、服装も軽装にしてなるべく涼しく過ごせるようにしましょう。

水分摂取も必要ですが、汗からは塩分も失われていくので塩分も一緒に補給できるように経口補水液やスポーツドリンクを飲むのがよいです。水と塩分のタブレットを補給するのでもよいです。

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