コロナ禍のスキンケア

長野中央病院 皮膚科 医師 山崎 自子

皮膚のバリア機能と保湿の重要性

皮膚にはバリア機能があります。体内から体外へのバリアが障害されると皮膚(主に角質)の水分量が減少して乾燥肌になります。

乾燥肌が続くと、痒みを感じる神経が皮膚の表面に伸びてきて、服が擦れたといった軽微な刺激で痒みを生じるようになります。体外から体内へのバリアが障害されると、外部からの刺激で容易に皮膚炎が生じたり、感作といって特定の物質に対して過剰な免疫反応(アレルギー)が起こりやすくなったりします。

細菌などの病原体も皮膚の表面に付着、増殖、あるいは侵入しやすくなるので、感染症のリスクも高まります。

皮膚バリアを補完、維持するためには保湿が重要です。保湿剤は入浴後、可及的速やかに使用するのがよいでしょう。洗浄で皮膚表面の皮脂が除去されるため、そのままでは皮膚の乾燥がさらに進んでしまいますし、角質層が膨潤しているため塗り薬の浸透性がよいからです。

ちなみに入浴中に皮膚に吸収された水分量は10分程度で元に戻ってしまうといわれています。

増加するマスクトラブル

ここ数年、マスクを着用することによる皮膚トラブルが増えています。ヒリヒリ・チクチクなどの違和感、赤み・ぶつぶつ・痒みといった皮膚炎、ニキビ・吹き出物のような感染症が代表的な症状です。

原因の第一は、蒸れです。気密性が求められるため、マスク内環境は皮膚にとって過酷です。角質がふやけて剥がれやすくなりバリア機能が低下する上、ふやけた角質で毛穴が詰まり、マスク内温度の上昇で皮脂の分泌も高まります。その上、マスクを外した瞬間から皮膚は急速に乾燥し、さらにバリア機能が低下する悪循環に落ち入ります。

摩擦もトラブルの原因になります。マスクが大きすぎてズレてしまう以外にも、素材が硬い、縫い目や紐の接着部が擦れる、ゴム紐がきつすぎて耳に食い込むといった要因でおこります。

話すことが多い場合は唇も荒れますし、男性で顎髭が伸びていると、話をするたびに擦れてマスクがズレやすくなるため注意が必要です。

対策としてはマスクをつける前の保湿が重要で、唇が荒れやすい場合は唇の保湿も忘れないようにしましょう。

マスクを外した後には洗顔し、保湿をしっかり行います。蒸れているから保湿は不要と思いがちですが、蒸れと保湿は別ものです。一日中マスクをする場合は、昼食後に新しいものに交換するのも一法です。また、適切な大きさのマスクを正しく装着することで摩擦を軽減できます。

細菌などの病原体も皮膚の表面に付着、増殖、あるいは侵入しやすくなるので、感染症のリスクも高まります。

敏感肌の人は不織布マスクの下にガーゼなどの布や綿・絹素材のマスクを挟んで使用するなどの工夫を試してください。

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