慢性腎炎
2006年04月01日
長野中央病院 腎臓内科医師 中山 一孝
慢性腎炎??~定期的な尿検査で早期発見しましょう~
慢性腎炎とは、何らかの原因によって腎臓の組織の炎症が持続する病気です。
自然に治癒したり、腎臓の機能が正常なまま経過することもありますが、腎臓の機能が低下し、透析療法が必要な末期腎不全にいたることもあります。
現在、透析による治療が必要となる原因疾患としては、糖尿病性腎症に次いで第2位となっています。
定期的尿検査が大切
慢性腎炎の初期は自覚症状が少なく、学校や職場での健康診断の際に尿検査で偶然に見つかることの多い疾患です。
浮腫や高血圧、全身倦怠感、食欲低下などの具体的な症状が現れる段階ではすでに腎機能障害が進行している事も少なくありません。
早期発見・早期治療のために定期的に尿検査を受け、異常を指摘された場合は速やかに医療機関を受診する事が大切です。
代表的疾患はIgA腎症
慢性腎炎の代表的疾患にIgA腎症があります。IgA腎症は発病してから20~30年後に約半数の患者さんが透析を必要とするようになる可能性があるとされています。
発病の原因は未解明な部分もありますが、風邪を引き起こす細菌・ウィルスなどに対する免疫反応に関与した自己免疫・アレルギー性疾患であるとする考え方が有力です。
IgAとは、病原体などから体を守る抗体たんぱくの一種ですが、このIgAが尿の濾過装置である腎臓の糸球体(※)に異常に沈着して炎症を引き起こすのがIgA腎症です。その炎症のきっかけのひとつは扁桃腺だと考えられています。
診断の方法は
他の腎炎と比べて血尿になることが多いため、患者さんご自身が尿の異常に気づいて受診される場合がほとんどです。
尿検査と血液検査の数値の組み合わせで、ある程度の診断ができますが、最終的な診断は腎生検という検査になります。
腎生検とは、腎臓に細い針を刺して組織を採取し、顕微鏡で詳しく調べる検査です。局所麻酔を用い、病室で短時間に行える検査ですが、検査後は安静が必要なため4~5日ほどの入院期間が必要です。
4段階に分類して治療
厚生労働省のIgA腎症研究班ではIgA腎症の予後を、透析療法に至る可能性のほとんどない予後良好なものから、5年以内に透析療法にいたる可能性の高い予後不良なものまで、4段階に分類しています。
この分類によってその後の治療方針は異なります。飲み薬と食事療法だけの場合もありますが、たんぱく尿が多く出ている場合や炎症の活動性の高い場合は、別途に扁桃腺を摘出する手術やステロイドというホルモン剤による治療が行われ、効果を上げています。
放置したままでは透析療法が必要になってしまう可能性のある慢性腎炎。尿の異常、体調不良を感じたらすぐに受診してください。