骨粗しょう症
2005年12月01日
閉経後の女性に急増 ~骨粗しょう症にご注意を~
長野中央病院 整形外科医師 前角 正人
60歳代から急激に増加
骨粗鬆症とは、骨の量が減って質が低下し、骨の中がスカスカとなる全身性の病気であり、この結果、骨が弱くなり健康 な骨に比べて骨折しやすくなった状態と言えます。骨粗鬆症は閉経後の女性に多く60歳代から急激に増加します。全国的に は推定 1000万人以上と考えられています。
たやすく骨折、寝たきりの原因に
骨粗鬆症になると、背中や腰が曲がったり、身長が低くなったりしますが、痛みはなく、ほとんど無症状と言えます。 しかし、ほんのちょっとしたことで骨折を起こし、そのため、長期の治療を要することもあります。 また、この骨折が原因で寝たきりにな ることも少なくありません。骨折、転倒は、介護が必要となる原因の第3位になっています。
骨粗鬆症の患者さんは、床で転んだり、しりもちをついたり、時には重いものを持ち上げたときなど、「こんなんで?」と驚 くような状況で、たやすく骨折を起こします。多くみられる部位は、背骨や腰(椎体<ルビ・ついたい>圧迫骨折)、太もも の付け根 (大腿骨頚部<ルビ・だいたいこつけいぶ>骨折)、手首(橈骨遠位端<ルビ・とうこつえんいたん>骨折)、腕の付 け根(上腕骨近位部<ルビ・じょうわんこつきんいぶ>骨折)です。このような骨折の頻度は高く、アメリカでは100万件以上、日本では大腿骨頚部骨折だけで 年間7万件程度(当院では70件程度)発生していると言われています。
骨粗鬆症の原因と診断
骨は20歳ごろまで成長を続けますが、その後は骨のリモデリング(骨吸収と骨形成)により毎日作り替えられています。 骨のリモデリングは女性ホルモンが強く関与していますが、閉経後の女性では女性ホルモンの急激な低下により、骨吸収の みが増加して 閉経後骨粗鬆症がおこります。高齢者では、骨のリモデリングそのものが低下し、老人性骨粗鬆症が起こります。骨粗鬆症の診断には、症状などの問診の他、レントゲン検査や、骨密度の測定などを行います。
骨粗鬆症による骨折は大きな外傷でなくても発生することがあり、そのためレントゲン検査は骨折の有無を調べるために 行われます。骨量を反映する骨密度は骨折が起こりやすいかどうかの検査です。腰椎、股関節、手関節、踵<ルビ・かかと >、手の甲、 (中手骨<ルビ・ちゅうしゅこつ>)などが用いられます。血液・尿検査による骨代謝マーカーの測定により、 骨のリモデリングのバランスを知ることができます。この結果をもとに骨粗鬆症治療薬を選択することもあります。
薬よりも食生活と運動を大切に
骨粗鬆症の治療薬は、病気の進行と骨折の危険性を抑える薬です。骨が壊れるのを抑える薬(骨吸収抑制薬)と、骨が作 られるのを助ける薬(骨形成促進薬)とがあります。 しかし、骨量を増やすことは大変なことで、薬にのみ頼っていては限界があります。
まずは食生活です。骨粗鬆症は痩せ型で小柄な人、運動不足の人に多く見られます。骨を作るのに十分なカルシウムとビ タミンDを摂ることで、特にカルシウムは1日800mgを必要とします。また骨を刺激するために適度な運動をしましょう。
日常生活では骨折を起こさないように、転倒しないように、靴や服装を選びましょう。高齢者の転倒は屋内での発生が圧倒的に多いものです。 ちょっとした段差や滑り易さを取り除くことも重要です。
骨粗鬆症は予防できます
最後に骨粗鬆症の予防です。骨量は30歳代がピークとなりますので、それまでにいかに蓄えるかです。老後のための貯 金のようなものです。若いころの、偏食や無理なダイエットはもちろん、喫煙、過度のアルコールやカルシウム不足の食事 などが危険因子 となります。また運動不足も骨量の低下をまねきます。
40歳以降徐々に骨量が低下しますが、貯金が多ければそれが枯渇する心配が少なくなると心得ていてください。
長野市の骨粗鬆症検診は、40歳~70歳の女性に対し、5年毎に一部有料で行われています。ご心配な方、興味のある 方は一度検査してはいかがでしょうか。ピーク時の骨量を知ることができますし、経時的な変化をみることもできます。