味覚の秋、キノコ中毒にもご注意を

長野中央病院・内科 医師 高井 悠真子

秋といえば、キノコ狩り。キノコはカロリー控えめ、旨味たっぷり、食物繊維豊富な素晴らしい食品ですが、9、10月に多発するのが…キノコ中毒食中毒全体での割合は少なめですが、「自然毒における食中毒事例」に限ると発生件数、患者数ともに最多です(※1)。日本で野生キノコを習慣的に食べている地域は、新潟、北海道、福島、岩手…そして長野県。キノコ消費量もトップです(※2)。

キノコ狩りに備えていくつか注意点をご紹介します。

❶素人判断ダメ絶対

キノコは日本に生息するだけで数千種類、そのうち現在分類されているキノコは約2000種といわれます。そして見た目も似ていて、呼び方も似ていて、種類も豊富。関東地方でイッポンシメジと呼ばれている食用キノコは通称で、本来はウラベニホテイシメジ、本物のイッポンシメジという名のキノコは有毒…なんて訳の分からない現象が起こるのがキノコの世界。食用と「確実に」判断できないものは採らないように!

❷採ったキノコを人にあげない

キノコ中毒の大半は自ら採取したキノコ、知人から譲り受けたキノコと言われます。売るなんてもってのほかです。

❸迷ったら専門機関に相談を!

食用か判断できない場合は食べないのが確実ですが、迷ったら保健所、森林研究所、林業試験所、キノコ相談員などに相談しましょう。また、食べるときは万が一に備えて同定するために一部を生のまま保存しておくとよいです(長野市は毎年相談所を開設。ホームページを確認)。

❹食用キノコでも思わぬ落とし穴あり

食用キノコにも実は極少量のホルムアルデヒドやシアン化水素(青酸ガス)などが含まれているものもあります。気候や採取地によって成分も変わります。また食物繊維は適切量ならお通じを良くするなどの効果がありますが、食べ過ぎると腸が詰まったりガスがたまったり逆効果となる可能性があります。健康な人なら1日約100gまで!お腹の弱いお年寄りはしっかり刻んで少量を!そしてしっかり加熱調理を!!

※1 自然毒による食中毒の発見件数の経年変化 圧倒的キノコ‼

※2 都道府県別キノコ消費量(家計調査 2016より) 長野県のキノコ消費量は日本一

❺キノコ狩り、キノコ摂取後の体調不良時は医師にしっかり情報提供

キノコの毒性にはさまざまな種類があり、ほかの病気と間違えやすい症状が多いです。「何日にキノコ狩りにいってこんなキノコを食べました」(可能であれば生のキノコを見せる)。この一言で正しい治療を受けられる可能性がぐんと上がります。

私もこれらの内容に注意して、キノコ狩りに挑戦したいと思います(初体験なので専門家同伴ツアーを探すつもりです。)皆様も楽しく安全に健康的に秋の味覚を楽しみましょう!

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