褥創を予防しましょう

長野中央病院 リハビリテーション科医師 中野 友貴

「医療構造改革」の嵐吹き荒れる

今年春。「医療構造改革」の激震が走り抜けています。医療保険報酬3%超の切り下げ、中でもショックの大きいのは療養型病床の点数の大幅な改訂です。

大幅な収入減を強いられ、療養型病院閉鎖というニュースも聞かれます。政府は38万床ある療養病床の23万床分を2012年までに閉鎖していこうとしており、これから大変な影響が出ることは明らかです。

療養型には寝たきりの患者さんが多く、行き場を失った方は、家族介護にならざるをえないと思われます。

家族介護の落とし穴「褥創」

家庭介護をしていく上で大きな問題のひとつに褥創があります。

褥創は私が医者になった頃は、寝たきりの患者さんには必ずといってよいほどできていました。 膿のあふれ出る褥創、ウジのわいた褥創、骨の見える褥創、褥創のさまざまをみてきました。

今は入院患者さんに褥創はほとんどできませんし、ひどい褥創をみる機会は少なくなりました。褥創のイロハを知っていることは重要です。

褥創の原因

骨とマットの間で皮膚が圧迫されて一定時間血液が流れないと、皮膚が壊死して褥創になります。仰向けに寝ている時、一番体重のかかるのはおしりの上の部分、仙骨部です。 ここが最も褥創がよくできる場所です。かかとや外くるぶしもできやすいところです。より広い部分に体重の圧を分散させ血液の循環を守ることが重要になります。

<褥創予防4原則>
(1)寝たきりで寝返りを自分でうてない患者さんには、必ず体圧分散マットをセットする。
(2)車イスに乗せられる離床可能の患者さんは車イスに乗せる。リハビリ可能の患者さんはリハビリをすることが大事。
(3)イスに座らせていればよいというわけにはいかない。体を動かせない人は、尾底骨に体重が集中する。ここにできる褥創を防ぐには車イスの褥創防止用のマットが必要。
(4)ベッドを起こす、ギャッチアップすることにより仙骨部の皮膚に生じる摩擦が褥創の原因となる。ギャッチアップして放置せず、車イスに乗せることにつとめる。

栄養状態をよくしたり、清潔にしたりするのは、介護の原則ですが、褥創予防には以上に述べた4原則、 特に(1)と(2)の「徐圧と離床」が何より重要です。

以前、学校では2時間おきの体位交換が必要と教えていましたが、家庭介護では無用の負担を増やすものでしかなく、4原則が守られれば不要です。

しかし、もともと寝たきりで、肺炎などを合併し、食事もとれなくなり、全身状態の極めて悪くなった患者さんの褥創予防は難しいものです。

アメリカの褥創

アメリカの教授の講演を昨年聴きました。巨大な褥創を華麗なオペで治していきます。我々のみる褥創より巨大で深いものです。

褥創のできる患者さんのほとんどが銃撃による脊髄損傷の患者さん達で、若い人が多いそうです。保険がなく、重くなるまで医療にかかれないアメリカの医療事情が反映しているようです。

保険証一枚で、いつでも、どこでも心配なく医療にかかれる今の日本の医療保険制度の良さを思いました。また平和な日本を守っていくことが大切だとアメリカの褥創のことを考えて思いました。 栄養状態をよくしたり、清潔にしたりするのは、介護の原則ですが、褥創予防には以上に述べた4原則、 特に(1)と(2)の「徐圧と離床」が何より重要です。

以前、学校では2時間おきの体位交換が必要と教えていましたが、家庭介護では無用の負担を増やすものでしかなく、4原則が守られれば不要です。

しかし、もともと寝たきりで、肺炎などを合併し、食事もとれなくなり、全身状態の極めて悪くなった患者さんの褥創予防は難しいものです。

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