おねしょ問題はこう考えよう
2006年06月28日
私の好きな児童文学者の椋鳩十の名作に「ねしょんべんものがたり」があります。読書ぎらいだった私がどうしてその本を憶えているかというと、私がおねしょ少年だったからです。 小学5年生までおねしょをしていた私がその本に励まされたのは、その内容ではありません。おねしょを主なネタにしたおかしな本が小学校の図書館に存在するという、その事実にです。 おねしょは確かに問題かもしれませんが、人類がひた隠しにするような問題でもありません。「大人も昔は子供で、そのときにはおねしょをしていた人がいっぱいいたもんだ」と子どもに語ってください。たとえホラでもそんな大人が近くにいてくれればその子はラッキーです。 逆に「私たちはしなかったのにこの子はどうして?」と言ったなら、その子は悲しい気持ちにさせられるでしょう。海底の貝になりたいと思ってしまう子もいるかもしれません。
長野中央病院 小児科医師 番場 誉
すっかり治っていたおねしょが急にぶり返したとき
そのときにはなにか原因があるはずです。ただし病気とは限りません。
怖いテレビが原因で夜のトイレが怖くなったかも。夏なら夜のスイカやジュース、春や秋なら急な冷え込みが原因かもしれません。ある種の薬の作用かもしれません。単に寝る前にトイレを忘れたのかもしれません。
もし思い当たりがなく数日以上も続くのなら、糖尿病や肝臓病、場合によっては脳の病気などを疑う必要があるでしょう。まずは小児科に相談しましょう。
異常にのどが渇かないか、急にやせてはいないかなどの簡単な質問・診察と、その場での簡単な尿・血液検査でそれらのまれな病気は否定できます。もっと調べた方がよければ小児科でも対応しますし、場合によっては他の科を紹介するかもしれません。
生まれてからずっと続いているおねしょ
もし周囲でとても健康に感じている子(ひ弱と思われていることはある)なら、その子に重大な病気が潜んでることは普通ありません。ただ、夜のおしっこの調節が年齢よりも若いだけで、自然と治るのがほとんどです。
キャンプや旅行などのときにおねしょがなければいいなと思ったら、小児科に相談してみましょう。学校の先生はそういう問題には慣れっこですから頼って相談してみるのもいいです。
子どもが「だれかに相談してみようかな?」と思うようになるのは、たいてい小学校の中学年以上ですので、その頃で良いでしょう。親が心配に思うのはもっと早いかもしれません。子どもの気持ちを確かめるべきですが、一般的には小学校入学までは心配は無用です。
小児科では、まずは質問や検査をしますが、この場合は病気を発見するためというよりは、どんな薬が効きそうか当たりをつけるためです。その後薬を試すことにしますが、薬といってもおねしょを早く治すために成長を早めるようなものではありません。あくまでも一時しのぎや、おねしょが自然に治るまでの時間稼ぎをするためのもので、やめられなくなるものでもありません。なお検査や薬の試しには数週間の時間が必要です。
おねしょの「3ない主義」
「怒らない・焦らない・起こさない」をおねしょ対応の3ない主義といいます。このうち「怒らない・焦らない」のことは最初に書きました。さて、「起こさない」とはどういうことでしょうか?
旅行中などで、よその布団を濡らさないために夜間に一時的に起こすことはなんの問題もありません。やってはいけないのは、夜中に起こすことを普段の習慣にすることです。
これは夜間の正常な睡眠リズムを狂わせて順調な発育、ひいては夜尿の自然な改善を妨げるだけで逆効果です。それよりも、紙おむつでも使って安心してぐっすり眠ってもらうほうが、どんなにか子どもにとってよいことでしょう。