気胸の診断と治療
2006年08月04日
長野中央病院 外科医師 彈塚 孝雄
大きく4つに分類
私たちの胸では、肋骨(あばら骨)で枠ができ(胸壁と呼びます)、肺がぴったり付くように広がっています。何らかの原因で肺が破れ、肺と胸壁の間に空気が漏れ、肺がしぼんでしまう状態を「気胸」と呼びます。
(1)自然気胸
(2)続発性気胸(肺癌・肺結核などによって起きるもの)
(3)外傷性
(4)医原性(医療行為の中で起きるもの)
と、大きく4つに分類されます。
多いのは自然気胸
この中では、「自然気胸」が圧倒的に多くみられます。肺は胸膜と呼ばれる強い膜で覆われており、空気が漏れないようになっていますが、胸膜が部分的に弱い場所(ブラと呼びます)ができ、これが破裂するために起こります。ブラがなぜできるかは、はっ きりわかっていません。
10代から20代で背が高く痩せ型の男性に多く見られます。
突然に発症し、胸痛・咳などの症状が見られます。
診断と治療
診断は、レントゲン写真で比較的容易につきます。原因となるブラを探るため、CT検査も行われます。
治療は、(1)安静??(2)脱気療法??(3)手術療法??(4)胸膜癒着療法と、大きく4つの方法が考えられます。
肺が破れても、ほとんどは自然に塞がります。肺の外側に漏れた空気が少なく症状が強くない場合は、静かに寝ていることで改善が得られます。
肺の外へ出た空気が多い場合、脱気療法が行われます。肋骨の隙間から、胸の中に細い管を入れ、肺から漏れた空気を体の外へ出します。
これらの治療で、良くなることが多いのですが、再度気胸を起こす危険があり、再発率は30~50%程度と言われています。
空気の漏れがなかなか止まらない症例もあり、当院では、(1)空気の漏れが1週間以上続く場合??(2)再発した場合??(3)初回発症でもCTでブラが明らかな場合、手術適応と考えています。
胸膜癒着療法は、肺の表面と肋骨の内側とを薬を使って広くくっつけてしまい、空気の漏れる場所をなくしてしまう方法ですが、肺の膨らみを制限するなど、肺の働きへの影響も大きく、慎重に適応を考えています。
手術方法
手術は、最近は胸腔鏡(カメラ)を用いた手術が増えています。
以前は10cm程度の切開をし、胸を大きく開ける手術方法で、術後の痛みも伴う方法でした。
胸腔鏡下の手術では、各々2cmほどの切開を3箇所行い、胸腔鏡、手術の道具を差し込み、モニター画面を見ながら行います。(図1)。
自動縫合器と呼ぶ器械を使って、ブラを含め、肺を部分的に切除します(図2)。 創が小さく、術後の痛みが少ないなど、負担の少ない手術方法と言えます。多くは術後4~7日で退院できます。