閉塞性動脈硬化症が増えています。

食生活の欧米化がすすみ、高齢化社会となって、閉塞性動脈硬化症が増えています。閉塞性動脈硬化症は動脈硬化の進行により、足の動脈の血流が悪くなったり、血流が途絶える病気です。日本で糖尿病患者は予備軍も含めて1620万人といわれていますが、糖尿病や糖尿病性腎症により透析を行っている患者様では特に増えています。

長野中央病院 循環器科医師 板本 智恵子

閉塞性動脈硬化症の原因は“動脈硬化”です。

動脈硬化は糖尿病、高血圧、高脂血症、たばこ、加齢、などにより長い年月をかけて進行します。この病気は特にヘビースモーカーに多いといわれています。閉塞性動脈硬化症の患者様は狭心症や脳梗塞を合併していることが多いといわれています。

足の痛みはありませんか?

閉塞性動脈硬化症の症状は最初は無症状ですが、そのうち下肢が冷たくなったり、しびれを感じるようになります。さらに進行すると、数百メートル歩行しただけで足が痛くなり歩けなくなります。しかししばらく休むと再び歩けるようになります。さらに進行して血流が低下すると、安静時にも足が痛くなります。見た目も足が白っぽくなったり、暗紅色となります。これをほおっておくと、筋肉や皮膚に酸素が十分送られないため足が腐ってきます。この状態まで進行すると生命を助けるために足を切断することになります。

おなじように足が痛む病気に腰部脊柱管狭窄症(注1)があります。この場合は、前かがみになると痛みが軽減することが多いようです。
(注1)脊柱管という脊髄神経を囲んでいる管がせまくなる病気。下肢の痛みやしびれをおこす。

症状のある方は検査をうけましょう。

閉塞性動脈硬化症が疑われる患者様が受診された場合には、下肢を触診し皮膚温の低下がないか、また下肢の動脈にふれ血管の拍動が十分あるか確認をします。異常が疑われる方には、血圧脈波検査をお勧めします(写真①)。この検査は両手と両足に血圧計をまいて測定するとても簡単な検査です。次に画像診断で血管が狭くなっている場所を探します。画像診断には超音波(エコー)やCT、血管造影などがあります。最近当院にマルチスライスCTが導入され、とてもよい画像がえられるようになりました。

日常生活での注意点

タバコは最大の危険因子ですから禁煙を実行しましょう。また脂の多い食事はひかえてください。運動療法も有用といわれています。

治療

抗血小板薬などの薬物治療を行います。これらの治療が無効で症状が強い場合は、手術の適応となります。手術にはカテーテルによる治療と外科的なバイパス手術があります。

カテーテルによる治療は血管のなかに風船のついた管(カテーテル)をいれ狭いところを風船で広げます。風船で膨らませたあとに金属性のステントという管を血管のなかで拡張して血管を十分広げます(写真②③④)。この治療では当院は県内でも有数の施設です。ただし閉塞部が長い場合は心臓外科にお願いして人工血管や自分の静脈をつないでバイパスをつくってもらっています。

なお発作性心房細動などの不整脈により心臓内にできた血の塊が足に飛んで、急に血管がつまる場合があります。急に下肢が白く冷たくなります。すぐに血栓を取り除かないと下肢切断や死亡する危険性が高いのですみやかに受診しましょう。

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