膵臓の病気について
2018年10月01日
今日は膵臓のお話をします。膵臓って普段の生活ではあまり耳にしない臓器です。 しかし膵臓癌と聞くと質の悪そうな病気だなって感覚があります。最近は膵臓癌が増えてきています。 そこで膵臓を専門として治療している外科医の立場から戦い方を指南します
長野中央病院 外科 医師 成本 壮一
膵臓の場所と働き
膵臓は胃の裏、腰椎との間にあります。膵臓を病むと胃や腰の痛みとして感じます。
膵臓は栄養においてとても重要な働きをしています。まず消化液を作って食べたものを消化します。次 に吸収した栄養を肝臓や筋肉に取り込むインスリンをつくっています。膵臓が弱ると消化不良、下痢を起こします。また、インスリンが足りなくなると糖尿病となります。
膵臓癌も治る時代に
膵臓について詳しくなったところで膵臓癌の話に入ります。胃癌や大腸癌に比べると治りにくい癌です。 1990年には5年生存率が10%しかありませんでした。手術や化学療法が改善され、2001年に20%を超えました。2016年には30%まで上がってきました。転移のない症例では 70%に達します。膵臓癌も治る時代になってきました。
人間ドックの超音波で発見されることも
治るためには早期発見、早期治療、早期退院が重要です。そもそも治りにくい理由の1つが発見困難です。診断されたときに手術できる人は4分の1です。原因のよくわからないちょっと した胃痛、背部痛、50歳以上での血糖値の上昇は危険なサインですが膵癌と気づかず経過観察されていることがあります。内視鏡やレントゲンでは発見できません。
一歩進んで膵臓超音波や造影CT検査を行うと発見できます。わずかな変化を見つけなければならず膵臓を得意とする施設でないと発見は困難です。症状がなくても人間ドックの超音波で発見されることもあります。
早期退院の肝は体力
治りにくい第2の理由は手術のむずかしさです。手術は平均7時間かかり、退院まで3~4週間の入院が必要とな ります。早期退院の肝は体力です。リハビリや栄養管理で体力を落とさないことが重要です。体力があると合併症が減るだけでなく、同じ進行度の癌でも再発率が下がることがわかってきま した。手術の前から栄養、運動をするように栄養士、リハビリセンターに協力してもらい、万全の準備をして手術に臨みます。
長野にはピンピンコロリという言葉があります。「自分の健康は自分たちで守る」をモットーに日ごろから体力を維持するための努力は健康長寿の秘訣です。 我々もそのお手伝いができるように準備してお持ちしております。もしかしたらと思った方は気軽に受診をお願いします。