早期発見のために大腸内視鏡検査をうけましょう
2009年06月01日
長野中央病院 消化器内科 太島 丈洋
急激に増加している大腸がん
近年我が国では食事の欧米化やライフスタイルの変化により、大腸がんが増加傾向にあります。厚生労働省が発表している人口動態統計の部位別がん死亡率をみますと、男女共通でここ数年大腸がんによる死亡率が急激に高まっています。
特に女性の大腸がんは、2005年、2007年と死亡率1位です(図1)。 また年齢別にみた大腸がんの患者さんは、50歳代付近から増加し始め、高齢になるほど多くなります。
大腸は消化吸収された腸内容物をため、水分を吸収しながら大便にするところです。約2mの長さがあり、大腸粘膜のあるところではどこからでもがんができますが、日本人ではS状結腸と直腸が大腸がんのできやすい部位です。
早期発見でほぼ100%完治
大腸がんは、早期であれば一般的には自覚症状はありません。がんが進行してくると、便が細くなる、残便感、腹痛、下痢と便秘の繰り返しなど排便に関する症状が出てくる事が多いのですが、これらは健康な人にも時々おこりうる症状なので注意しない人が多く、また、血便が見られる場合でも痔と勘違いして受診が遅れることもあります。
早期の大腸がんであれば、治療でほぼ100%完治するため、早い時期に発見することが重要となります。
通常観察
特殊光(NBI)観察
40歳以上の人は大腸内視鏡検査を
大腸がんの検査の代表的なものは「便潜血検査」で、食事制限なく簡単に受けられる検査です。この便潜血検査を受けた人は、大腸がんによる死亡率が受けない人に比べて約7割低かったことが、07年の厚生労働省研究班による大規模な調査でわかりました。
ただし、この検査が陽性でも「大腸がんがある」ということではありませんし、逆に陰性でも「大腸がんはない」ともいえません。お腹の症状もなく、便検査で潜血が認められない場合でも大腸の病気がないとはいえないのです。40歳以上の方には、直接大腸の中を観察できる大腸内視鏡検査(大腸カメラ)をおすすめします。
検査方法
大腸内視鏡検査とは肛門から内視鏡を挿入して、直腸から盲腸までの全大腸を詳細に調べる検査です。大腸内に便が残っていた場合は十分な検査ができませんので、検査当日に腸管洗浄液を2リットル飲んでいただき、大腸内をきれいにしてから検査を行います。通常軽い鎮静剤を使用して行います。検査は20分程度で終わり、多くの場合大きな苦痛もありませんが、開腹手術後などで腸の癒着している方や、腸の長い方は多少の苦痛が伴います。
検査は、まず内視鏡を肛門から一番奥の盲腸まで挿入して、主にスコープを抜いてくる際に十分に観察します。
もしポリープなどの病気を見つけた場合、悪性か良性かどうかを調べなければなりませんが、最近では内視鏡の技術改良が進み、組織をとって時間をかけて調べなくても、スイッチを切り替えて特殊な波長の光を当てて観察することで良性・悪性の判別がある程度可能となりました。大きさとポリープの性状から、内視鏡での治療の適応があれば、後日入院していただいて内視鏡で切除することになります。
大腸内視鏡検査は3割負担の方で5100円です。大腸がんは早期発見早期治療が有効ながんですので、気になる症状がある方はぜひ気軽に受けてみてください。