毎日やろう「立ち上がり訓練」
2013年07月01日
長野中央病院 リハビリテーション科医師 中野 友貴
立ち上がり訓練の導入
当院のリハビリ病棟がオープンしてから33年目を迎えています。「脳卒中患者さんを長野市で治療したい」という、職員や患者さんの思いから出発しました。
発足当時のリハビリスタッフは、マッサージ師が2人だけ。その後徐々に専門職が増えましたが、患者さんが病棟で寝ている時間をなくすことはなかなかできませんでした。
訓練時間が少ないことで状態が良くならないと悩んでいたこの時期に見つけたのが、「立ち上がり訓練」です。文献を看護師と読み合わせ、患者さんに廊下に並んでもらい、集団で訓練を始めました。自主トレも行ないました。1年もたたずに定着し、みるみる患者さんが良くなるのを実感しました。
三好正堂先生の病院を見学
昨年、日本に「立ち上がり訓練」を紹介し、実践し続けている三好正堂先生の浅木病院(福岡)を見学しました。結構重症な患者さんもいますが、徹底した立ち上がり訓練を実践していました。
先生は、「1日200回をめざしているが、できる人は300回、600回も可能だ」と言います。他の病院で良くならないと宣告された患者さんも受け入れ、7割の人の改善を報告。「マヒした手にこだわっていて体力をつける重要な時間を無駄にしてはいけない」と警告されていました。
見学後、それまでの「サッと立ち上がって10数えてサッと座る」方法を見直し、浅木病院の、ゆっくり「1、2…5」と数えながら立ち上がり、立った姿勢で一息おいて「6、7…10」とゆっくり数えながら椅子に座る方法にかえました。下肢を中心に全身の筋肉を使い、きたえるのです。
変更の前後を知る患者さんからは、「この方法は足の筋肉がつかれる」「力が付く感じがする」と好評です。
外来患者さんにも有効
外来患者さんにも勧めています。脳卒中の方だけでなく、最近転びやすくなったり運動しなくなった方に有効です。
口で言ってもすぐ忘れられてしまうので紙に印刷して、食事の前後に10回ずつやるように勧めています。これは三好先生が紹介したハーシュバーグ先生の元のやり方です。1回にやる運動量は少なく、それを1日に何回も繰り返す「少量頻回」は、疲れずに繰り返すことができます。
1か月後に来院した患者さんが「立ち上がり訓練をしてから元気になった」「転ばなくなった」「力が付いた」と口々に報告してくれるのを聞くのはうれしい瞬間です。
何年か前、「みんなの医療」で立ち上がり訓練を紹介したところ、市内の医療生協以外のデイサービスでも取り組まれるようになりました。組合員さんが勧めてくださったそうです。しかし、新しい介護施設も多く、広がりは十分ではありません。
老健ふるさとは立ち上がり訓練を毎日続け、自宅に帰れるようになった利用者さんもたくさんいます。長野県は長寿で有名ですが、年をとっても、介護が必要になっても元気な長野県人でと、「立ち上がり訓練」の普及を訴えていきたいと思います。