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健康・病気の知識

動脈瘤ステントグラフトの治療

□長野中央病院 心臓血管外科 医師 早川 美奈子

  大動脈は、心臓から全身に血液を送る大もとの太い血管です。大動脈の病気には主に大動脈瘤と大動脈解離があります。
  大動脈瘤は、動脈硬化などで弱くなった動脈壁がコブ状に膨らんでしまう病気です。症状はないことが多く、健診などで偶然発見されます。瘤は自然に小さくなることはなく、徐々に大きくなり、ある程度の大きさになると破裂します。破裂する前に予防的に外科的治療を行います。
  大動脈解離は、血管壁内に血液が流れこんで、壁が層状に裂けてしまう病気です。突然の激しい痛みなど、発症は急激で、緊急手術となることが多いです。壁の層構造が壊れているため、破裂の危険性が非常に高く、コブのように膨らんでしまうこともあり、これを解離性大動脈瘤といいます。


従来の治療

   従来の手術法は人工血管置換術といいます。皮膚を大きく切開し、目的の血管を露出して、人工血管を縫い付けます。病変の場所によっては、骨を切ったり、血管の手前にある臓器をどけたり、心臓を停止させて人工心肺を使うことがあるため、非常に大がかりで、体に大変負担がかかります。

ステントグラフト治療

   1990年頃から大動脈瘤に対してステントグラフト治療が行われるようになりました。ステントグラフトとは、金属のバネのような構造物と人工血管を組み合わせたものです。これを細く折りたたんだ状態で足の付け根の血管から入れて、目的の場所まで進めて広げると、人工血管が血管内に固定されます。皮膚切開は数センチですみ、手術時間が短いなど、従来の手術方法に比べ、低侵襲で術後の回復も早いです。
   大動脈解離においては、血管内治療は補助的な役割にとどまっていました。また、胸からお腹にわたっての大動脈解離に対する従来の手術は、死亡率が約10パーセントと高いため、血管が拡大して破裂のリスクがかなり高くなるまでは血圧を下げて経過観察しているしかありませんでした。
   1998年に初めて、大動脈解離に対するステントグラフト治療が発表されました。解離のもともとの原因である血管壁の亀裂の入り口をステントグラフトで塞ぎ、血液が解離腔に入り込めないようにします。解離腔が血栓化・縮小し、破裂を予防したり、本来の血液の通り道が広がったりする効果が期待できます。
   最近の研究では、早めにステントグラフト治療をしたほうが、それらの効果が得られやすいという結果もあります。これまで破裂寸前まで内服治療するしかなかった症例に対しても、ステントグラフト治療という選択肢ができ、今後の大動脈解離の治療方針が大きく変化する可能性があります。
   日本でのステントグラフト治療は、2007年から大動脈瘤が、2015年から大動脈解離が保険適用となっています。当院では、2008年から大動脈瘤に対するステントグラフト治療を開始しました。最近では、大動脈解離に対するステントグラフト治療も始めています。病気の部位や形によっては、ステントグラフトが適さない場合もあるので、患者さんごとに最適な治療を検討しています。