TOP > 健康・病気の豆知識 > 腹腔手術とは?
健康・病気の知識

腹腔手術とは?

□長野中央病院 外科医師  檀原 哲也


腹腔鏡手術とは

   腹腔とは、胃や腸などの臓器が納まっている空間です。腹腔鏡は、腹腔を観察するカメラのことをいいます。腹腔鏡手術は、腹部に5-12mm程の穴を4-5箇所あけて専用の筒(ポート)を刺し、炭酸ガスでお腹を膨らませ、そこからカメラや40cm程の柄の長い電気メス、超音波メス、鉗子などを腹腔に入れて、フルハイビジョンテレビモニターを見ながら行う手術です。

外科手術で最も大きな技術革新

   腹腔鏡手術は、1990年に初めて胆石の手術で行われました。それ以来わずか数年で、腹腔鏡下胆嚢摘出術は爆発的に普及し、今や標準治療となりました。
   腹腔鏡での胃がんや大腸がんの切除も10数年前から徐々に始まりましたが、癌治療としての安全性の問題や手術の困難性からなかなか普及しませんでした。しかし技術と手術器具の長足の進歩もあり、ここ数年で飛躍的に手術件数が伸びました。
   腹腔鏡手術は外科手術400年余の歴史の中で最も大きな革新と言われています。当院でも90年代前半から腹腔鏡下胆嚢摘出術を始めましたが、08年頃から胆石以外の手術を行うようになり、急激に手術件数が増えてきました。

体への負担少なく、入院も短縮

   腹腔鏡手術の最大の特徴は、傷が開腹手術(20−30cm)と比べると格段に小さく(0.5−5cm)、体への負担が少ない手術であることです。傷が小さいことは、美容的に優れているだけでなく、術後の痛みが軽く、早期の離床が可能です。
   さらに、開腹術と比べて腹腔内が空気にさらされないため、術後の腸の動きだしが早く、食事も早く開始できたり、癒着しにくく腸閉塞症になりにくいなどの利点があります。これらによって、入院期間の短縮、早期の社会復帰が可能になりました。
   術者側の利点としては、フルハイビジョンカメラを用いることによって、極めて鮮明な画像を得られるようになったことです。髪の毛より細い血管・神経まではっきり観察可能となり、開腹手術では分からなかった構造が認識できるようになりました。腹腔鏡手術では、より細かな操作が可能となり、出血の少ない、安全な手術を行えるようになりました。

執刀医に求められる高い技術

   腹腔鏡手術にも欠点があります。繊細な操作が必要で、開腹手術よりも時間がかかります。また、出血への対処が困難だったり、小さい視野での操作なので、見えていない部分で他の組織を損傷していても見落とされやすいことなどです。
   開腹手術よりも執刀医の技量の差が出やすいため、より高い技術を提供できるよう研鑽に励んでいます。
【現在当院で行っている腹腔鏡手術】(2012年手術件数)
良性疾患
[胆嚢結石症]
急性胆嚢炎(16例)、急性虫垂炎(8例)、鼠径ヘルニア(13例)、胃十二指腸潰瘍穿孔(1例)、小腸腫瘍(1例)、低悪性膵腫瘍(1例)、脾臓摘出(1例)など

悪性疾患
(原則として学会のガイドラインを遵守)
[胃癌]
早期からやや進行した胃癌(11例)
[大腸癌]
一部の直腸癌を除く早期からやや進行した大腸癌(23例)