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健康・病気の知識

脱水の治療に最適な水分とは?〜家庭でできる経口補液療法のはなし〜

□長野中央病院 小児科医師  番場 誉

   食事がうまくとれないとか発熱発汗や下痢で脱水が心配だとか、そんなときに最適な水分の話題です。
   水分ならどんなものでも飲めば最終的にすべて吸収されるので、病気でないときや急がないときには何でもよいのですが、今回は脱水の治療を念頭に「病気の時に最も効率よく早く吸収される水分」の最新医学情報をお届けします。


スポーツ飲料でなくてもよいのです

   [図1]は腸からの水分吸収速度の測定結果です。驚くことに、スポーツ飲料(アイソトニック飲料)は水分吸収が最も遅く、薄い食塩水やただの水のほうが吸収は早いのです。実はスポーツ飲料は味覚やエネルギーの補給を優先していて糖分が多く血液と等張(浸透圧が同じ)なために水分吸収は早くありません。「スポーツ飲料が一番じゃないの?」とびっくりされるかもしれませんが、素早く水分が吸収される必要がある脱水の治療にはスポーツ飲料は最適ではないのです。
   栄養でなく水分の補給を目的とするならば水道水やお茶でなんら問題なく、わざわざスポーツ飲料にする必要はありません。
   水分は小腸で主に吸収されるのですが、水だけのほうが栄養のあるスポーツ飲料よりも胃に溜まらずすぐに小腸に流れ込むことが知られており、これも水やお茶が有利な根拠とされています。

飲めるなら最適、経口補液!

   ただの水でも素早く吸収されますが、塩分と糖分を理想的濃度バランスになるように溶かし、かつスポーツ飲料よりも薄めに調整された特別な水は経口補液とよばれ、ただの水よりもさらに吸収がよく、スポーツ飲料との差に至っては歴然です。 脱水の治療には経口補液が理想的です。
   [図2]は、腸のなかでNa(塩分)とブドウ糖(糖分)がちょうど分子レベルで1対1のとき吸収ポンプが最大限に働くこと、つまり塩と糖との比率が大事であることを示しています。
   開発途上国の下痢の子どもにこの経口補液を使うだけで死亡率が劇的に改善したことからその有効性が確認され、WHOが脱水の治療に経口補液を世界標準として勧めるようになったほどで、最近では実際に医療現場でも使われています。
   以下のような手段で簡単に手に入るのも経口補液の魅力です。

★薬局薬店で買う
   「経口補水液」またはその略称「ORS(オーアールエス)」の名称がついて市販されています。分類としてはアイソトニックではなくハイポトニック飲料に属します。
★医者の処方を受ける
   「ソリタ顆粒」などの名称で水にとかすと経口補液剤になる粉末が薬と同じに処方できます。医療保険が効きます。
★自分で作る
   一般のアイソトニック飲料を水道水で2倍から3倍に水で薄めるだけでも吸収がよくなりますが、そこに食塩をコップ1杯につきごく少量、0.2g程度加えてかすかに塩気を感じる程度で完成です。
   はじめから自作したければ、水1リットルに白糖大さじ4杯、食塩小さじ0.5杯を加えてよく溶かすことで経口補液になります。

■ 少量頻回に飲むのがコツ

   経口補液は1回にたくさん飲むのではなく5分に1回、1回につき10cc(赤ちゃん)、30cc(学童)、50cc(大人)と少量を頻回に与えるのが成功の秘訣です。
   この程度の少量であれば、吐き気があるときにも積極的に飲ませてよいです。1時間も続けると点滴を1本受けたのと同じくらいの水分補給になります。

[図1]小腸からの水分の吸収速度(ラット)
(小児科臨床61(1)2008 金子一成 関西医科大学小児科 より抜粋/加筆)
小腸からの水分の吸収速度
[図2]小腸の細胞での吸収メカニズム  King 2003年より(一部加筆)
小腸の細胞での吸収メカニズム
SGLT1、Na+K+ATPase,Glut2が水分吸収に働くポンプの役目を果たすタンパク質。
水は主にSGLT1によってNa+(塩分)といっしょに吸収されるが、そのときに必ず同じ数のGlu(糖分)がペアになっていることが分かります。