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健康・病気の知識

子宮頚がんワクチン接種と子宮がん検診でがんを予防しましょう

□長野中央病院 産婦人科 医師  井吹 ゆき

唯一予防可能ながん

  子宮頚がんの原因は、ヒトパピローマウイルス(以下HPV)の感染によることが明らかにされています。HPVは性行為で感染し、性交経験があればその頻度に関わらず、10〜20歳代のうちに約80%が一度は感染しますが、感染自体はごくありふれたことです。数あるがんの中で、原因が1つのウイルスに特定されているのは、子宮頚がんのみです。また、検診によって前がん病変の段階で発見、治療できることから、子宮頚がんは唯一予防可能ながんといえます。
  今回、子宮頚がんの原因となるHPVの感染自体を予防するためのワクチンが発売され、長野中央病院でも今年の4月から接種できるようになりました。HPVには90以上の型がありますが、子宮頚がんなどの病変を起こしやすい高リスク型が数種類あり、そのうちで16型と18型が日本において子宮頚がんの59%を占めています。この頻度は、特に20〜30歳代の若年患者に高く、子宮頚部病変を有する若年患者においてHPV16・18型の検出率は、80〜90%と判明しています。また、HPV16・18型の感染では、感染から病変に進展するスピードが早いとも言われており、この2つの型の感染を予防するための現行ワクチンは、若年者でより高い効果が期待されています。ただし、子宮頚がんを引き起こすウイルスは他の型も存在するため、100%の予防効果とはいかないのが現実です。

接種の実際

【HPVワクチン接種の対象は?】
  最も優先されるのは、性交経験のない10〜14歳の女性です。次に優先されるのは15〜26歳頃までの女性で、特に性交経験のない女性は、14歳までの女性と同じ価値があります。45歳までの女性においては、新たな感染を予防するという意味で接種の価値はありますが、若年者に比べると価値は劣ります。46歳以降では特に推奨はなく、56歳以降の女性には有効性を示すデータがありません。ただし、希望者に接種してはいけないというわけではありません。
【接種不適当者は?】
  明らかな発熱のある方、重篤な急性疾患にかかっている方、本剤で過敏症を呈したことがある方などは接種ができません。
【接種要注意者は?】
  血小板減少症など凝固障害のある方、心臓血管系疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、血液疾患、発育障害等を有する方、予防接種で2日以内に発熱のあった方、過去に痙攣があった方、免疫不全の方、妊婦または妊娠の可能性がある方、授乳中の方は接種の適否を慎重に判断する必要があります。
【HPVワクチン接種の方法は?】
  接種前に必ず問診、検温、診察(婦人科の内診とは限りません)によって健康状態を調べます。上腕の三角筋に筋肉注射します。接種は3回行います。2回目および3回目の接種は、それぞれ初回接種後1か月および6か月です。このスケジュールが妊娠などにより中断された場合は、最初からの再開ではなく、残りの接種を行います。
【接種後の注意事項は?】
  局所の疼痛、発赤、腫脹、失神、頭痛、ショック症状など、他のワクチンと同様の有害事象の可能性があります。接種当日は接種部位を清潔に保ち、過激な運動を避ける必要があります。当日の入浴は差し支えありません。

子宮頚がん検診の必要性

  このHPVワクチンによって予防できる日本の子宮頚がんは、多く見積もっても現状の約7割です。残りの3割の子宮頚がんは、HPVワクチンが普及しても依然として発生すると考えられます。また、すでに感染している女性やHPV関連病変を有する女性には効果がありません。現行のHPVワクチンはあくまでも感染予防ワクチンであって、すでに存在している病変を治療する効果はないからです。子宮頚がんやその前がん病変を有しているかどうかは子宮頚がん検診で調べるしかありません。
  このような状況から、たとえ全女性にHPVワクチンを接種したとしても、決して子宮がん検診は省略できません。日本では子宮がん検診が対象者の約2割と低いことが問題です。最近はHPVワクチンが脚光を浴びていますが、それ以上に、子宮がん検診の受診率を向上させることが子宮頚がんの予防には大事です。

今後の展望

  現在のところ、HPVワクチンは高額ですが保険適用はなく、公費補助があるのはごく一部の自治体だけです。また、現在のHPVワクチンはHPV16・18型の予防ワクチンですが、全タイプ型の予防ワクチンや、前がん病変を治療するためのHPVワクチンも開発されつつあるようです。
  将来的には、より効果の高いワクチンが発売され、11〜14歳への公費補助が適用されるかもしれません。子宮がん検診受診率の向上とHPVワクチンの普及で、子宮頚がんが撲滅されることを願ってやみません。
【接種場所】
産婦人科および18歳までは小児科で接種できます。

【接種価格】
○組合員 … 1万4400円×3回=4万3200円
○組合員以外 … 1万8000円×3回=5万4000円